
目次
概要
ガウディが手がけた最初期の住宅建築として知られるカサ・ビセンス。
カサ・ミラやカサ・バトリョのようにバルセロナ中心部の大通りに建つ建物とは違い、カサ・ビセンスは庶民的な雰囲気が残るグラシア地区の細い通りの中にひっそりと建っています。
この建物は長年、個人の住居として使われていたため、一般公開されていませんでした。そのため、世界遺産に登録されているガウディ建築でありながら、以前は実際に内部を見学できる場所ではなく、旅行者の間でもやや目立たない存在でした。
その状況が変わったのは、2014年にアンドラ公国の銀行 MoraBanc がカサ・ビセンスを購入したことがきっかけです。その後、修復を経て、2017年11月から一般向けに有料公開されるようになりました。
カサ・ビセンスは、建築家としての資格を得てまだ間もないガウディが、31歳の頃に手がけた個人住宅です。若きガウディにとって、初めて本格的に設計・建築を任された住宅プロジェクトでした。
施主はマヌエル・ビセンス。一般にはタイルやレンガ関連の事業に関わっていた人物として紹介されることが多いですが、職業については諸説があり、株式仲買人だったとも言われています。
カサ・ビセンスは、後年のガウディ作品に見られる曲線的で有機的な建築とはかなり印象が異なります。直線的な構成が多く、タイル、レンガ、鉄細工、鮮やかな色彩が組み合わされた、非常に個性的な建物です。
建築様式としては、当時バルセロナでも流行していたネオ・ムデハル様式の影響を強く受けています。イスラム建築を思わせる幾何学模様や装飾的なタイル使いが特徴で、後年のガウディ建築とは違う、若い時代ならではの実験的な雰囲気を感じることができます。
その意味でカサ・ビセンスは、「完成されたガウディ」を見る場所というより、ガウディがまだ自分の建築表現を探りながら、色彩、素材、装飾を大胆に試していた初期作品として見ると面白い建物です。
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【ムディハル様式】 スペインの建築様式の一つで、中世にキリスト教徒とイスラム教徒が共存するという環境下でイスラム建築様式とキリスト建築様式が融合したスタイル。 |
| 特徴としては建物の壁面に幾何学文様の装飾を施しているなどがあります。 | |
夏の別荘として建てられたカサ・ビセンス

酷使される子供、生み出された富がブルジョアに集中しました
カサ・ビセンスが建てられた19世紀後半、バルセロナはスペインの中でもいち早く産業革命が進んだ都市のひとつでした。特に繊維産業を中心に経済が大きく発展し、街には新しい富を持つブルジョア層が生まれていきます。
一方で、その富の背景には、工場で長時間働く労働者や子どもたちの存在がありました。近代化によって都市は豊かになりましたが、その豊かさは社会全体に均等に行き渡ったわけではありません。
こうした時代の中で、新興の富裕層の間に広がっていった習慣のひとつが、夏を郊外の別荘で過ごすという暮らし方でした。
当時のバルセロナ中心部は、工場、住宅、商業施設が密集し、衛生環境も現在とは大きく異なっていました。そのため、夏の暑い時期に都市を離れ、空気のよい郊外で過ごすことは、健康面でも快適さの面でも魅力的だったのでしょう。
同時に、別荘を持つことは、単なる避暑だけではありませんでした。それは、自分たちが新しい時代の成功者であり、一般の庶民とは違う生活を送ることができるという、社会的な地位を示す意味も持っていました。
カサ・ビセンスも、そうした時代背景の中で建てられた夏の別荘でした。
現在の目で見ると、色鮮やかなタイルや装飾に目を奪われますが、その背後には、産業革命によって生まれた富、新興ブルジョア層の暮らし、そして都市と郊外の関係が見えてきます。
カサ・ビセンスは、若きガウディの初期作品であると同時に、19世紀末バルセロナの社会の空気を映した建築でもあります。

当時のバルセロナ郊外には、こうした富裕層のための別荘が数多く建てられていました。
現在のグラシア地区は、狭い通りに集合住宅が立ち並び、かつての別荘地としての面影はほとんど残っていません。しかし、カサ・ビセンスが建てられた当時、このあたりはバルセロナ市内から近く、自然も残る静かな郊外として人気がありました。
そのような場所に、マヌエル・ビセンスとその家族の夏の別荘として建てられたのがカサ・ビセンスです。
なお、ガイドブックなどでは、マヌエル・ビセンスをレンガやタイル工場の経営者として紹介している場合がありますが、実際には株式仲買人だったとする説もあります。職業については資料によって記述が分かれるため、ここでは「新興ブルジョア層の一人」として捉えておくと分かりやすいでしょう。
いずれにしても、カサ・ビセンスは単なる住宅ではなく、19世紀末のバルセロナで生まれた新しい富裕層の暮らし方を映した建物でもありました。
失われた別荘地の面影

広大な土地の端に礼拝堂、邸宅の間には滝がありましたが塀(赤)の部分が後に売却。塀の上部(青)の鉄柵はグエル公園へ
ただし、現在のカサ・ビセンスを見ても、当時の別荘地としての雰囲気はほとんど残っていません。
建設当時に比べると、広かった敷地の大部分はすでに売却され、現在残っているのは屋敷部分が中心です。
さらに周囲には、カサ・ビセンスよりも高い集合住宅が立ち並んでいるため、かつて自然に囲まれた夏の別荘だったとは、今の姿からはなかなか想像できません。
しかし、建設当初のカサ・ビセンスには、現在よりもはるかに広い敷地がありました。
屋敷の前には、ガウディが設計したレンガ造りの滝があり、敷地の端にはサンタ・リタ礼拝堂も建てられていました。この場所には、バルセロナの裏山から地下を通って湧き出る水があり、当時は病気に効く水とも言われていたそうです。
また、敷地を囲む塀の上には、シュロの葉をデザインした鉄柵が並んでいました。
その後、敷地が売却され、塀が取り壊された際、この鉄柵の一部はグエル公園へ移されました。現在、グエル公園の正面入口付近で見ることができる鉄柵は、もともとカサ・ビセンスにあったものです。
つまり、現在のカサ・ビセンスだけを見ていると失われてしまった要素の一部が、別のガウディ作品であるグエル公園に残されているわけです。
カサ・ビセンスは今では住宅街の中に埋もれるように建っていますが、かつては滝や礼拝堂、庭園、鉄柵を備えた、かなり大きな夏の別荘だったことが分かります。
玄関の変更と増築
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| 以前は夏の別荘と言うに相応しい庭がありました | ①が以前の玄関②が現在の玄関③ |
現在のカサ・ビセンスを見ると、建物の周囲にはほとんど庭が残っていません。しかし、建設当時は夏の別荘にふさわしい広い庭があり、屋敷と庭が一体となった空間として設計されていました。
この後の邸内の解説でも触れますが、ガウディは外の庭から屋敷の内部まで、自然が連続して入り込んでくるようなイメージでカサ・ビセンスを設計しています。そのため、庭が失われ、周囲を集合住宅の壁に囲まれている現在の姿だけを見ると、本来の魅力の一部が削がれていることも事実です。
たとえるなら、今のカサ・ビセンスは、翼の一部を失った鳥のような状態とも言えるでしょう。もし当時の庭が残っていれば、現在とはかなり違った印象を受けたはずです。
また、カサ・ビセンスの前の通りが拡張された際には、その分だけ敷地が削られ、もともとの玄関も現在の位置へ作り替えられました。さらに、建物の後方にあった女性修道院が取り壊されたあと、その空いた部分を利用してカサ・ビセンスは増築されています。
現在私たちが見ているカサ・ビセンスは、ガウディが最初に設計した姿そのものではありません。庭の消失、道路拡張による玄関の変更、そして後年の増築を経て、今の形になっているのです。
他のガウディ作品との違い
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| ムディハル様式を模し直線的なタイルを貼り付け外壁が印象的ですが、近くでよく見ると細部は雑さも多少目立ちます | |
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| ペルシアナと呼ばれる窓の遮光は独特のデザイン | 岩で作られた壁の部分とタイルとレンガとの組み合わせ |
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| いかにもアラビア風という感じの入り口 | 外観で最もガウディらしさを感じるのがこれ |
カサ・ビセンスを見てまず感じるのは、私たちがよく知る後年のガウディ作品とはかなり印象が違うという点です。サグラダ・ファミリアやカサ・ミラ、カサ・バトリョをすでに見た方なら、その違いに少し戸惑うかもしれません。
まず大きな違いは、外観が直線を基調としていることです。
後年のガウディ建築では、自然界の形を思わせる曲線や有機的な造形が大きな特徴になります。特にカサ・ミラなどでは、直線を避けるようなデザインが徹底されています。
そのため、直線的な輪郭を持つカサ・ビセンスは、一般的にイメージされる「ガウディらしさ」とは少し距離があるように見えます。ガウディの言葉としてよく引用される「自然界には直線は存在しない」という考え方から見ると、カサ・ビセンスはまだその思想に到達する前の作品とも言えるでしょう。
つまり、この建物は完成されたガウディを見る場所というより、ガウディがまだ自分の建築表現を探していた時期の作品として見ると分かりやすくなります。
また、カサ・ビセンスには当時流行していたネオ・ムデハル様式の影響も強く見られます。イスラム建築を思わせる幾何学模様や装飾タイルの使い方は印象的ですが、それ自体は当時の建築家たちにも広く使われていた表現でした。
その意味でも、ここには後年のガウディに見られる、自然の造形を深く観察し、そこから独自の建築へ発展させていく姿とは少し違う段階が見えます。
もうひとつ注目したいのが、タイルの使い方です。
カサ・ビセンスの外壁には鮮やかなタイルが使われていますが、これはグエル公園などで見られるトレンカディス、つまり破砕タイルによるモザイクではありません。同じ大きさ、同じ柄のタイルを規則的に並べたものです。
後年のガウディが見せる自由で流動的なタイル表現を知っていると、この規則的なタイル使いにも、まだ初期作品らしさを感じます。レンガの部分も、後年の作品に比べるとやや素朴で、ガウディ独特の有機的な造形美とは違う印象を受けます。
それでも、このカサ・ビセンスの中にガウディらしさを探すなら、やはり自然をモチーフにした鉄細工でしょう。
特に、シュロの葉をかたどった鋳鉄の門や鉄柵には、後年のガウディにつながる感覚がすでに表れています。この鉄柵の一部は現在グエル公園にも残されており、カサ・ビセンスと後年のガウディ作品をつなぐ興味深い存在です。
カサ・ビセンスは、後年の代表作のような完成度を期待して見る建物ではありません。むしろ、若きガウディが当時の流行や素材、装飾を取り入れながら、自分の建築を模索していた過程を見る建物です。
そう考えると、この少し違和感のある初期作品こそ、ガウディがどのように変化し、後の独自の世界へ進んでいったのかを知る手がかりになります。
1階部分
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| 入場して直ぐガイドさんから説明があり | また各フロアー毎にもそれぞれガイドがいます |
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| ここが食堂として使われた部屋 | テラスの日覆いは初めて見る独特のデザイン |
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| 天井の細かな装飾を見ると、まるでカタルーニャ音楽堂を彷彿させます | |
カサ・ビセンスの見学には、一般入場とガイド付きツアーがあります。
一般入場の場合でも、建物の外や各フロアにはスタッフが配置されており、必要に応じて英語で簡単な説明を受けることができます。そのため、自分のペースで見学しながら、気になる点をその場で確認できるのは便利です。
建物の外観でも触れましたが、カサ・ビセンスの内部を見ても、後年のガウディ建築に見られるような曲線的で有機的な空間はあまり感じられません。
むしろ、装飾の密度や色彩の使い方、天井や壁面の細かな意匠を見ると、ガウディ自身の後年の作品というより、当時のカタルーニャ建築界の流れの中にある建物として見た方が分かりやすいでしょう。
特に、ガウディが建築学校時代に学んだ世代の建築家たち、たとえばカタルーニャ音楽堂で知られるドメネク・イ・ムンタネーの作品に通じるような装飾感覚も感じられます。
また、建物の後方部分は、1899年に所有者が変わったあと、別の建築家によって増築された部分です。
この増築部分は、ガウディが最初に設計した空間とは性格が異なり、見どころとしてはやや控えめです。そのため、見学の際には、ガウディが手がけた当初の部分と、後年に加えられた部分を少し分けて見ると分かりやすいでしょう。
カサ・ビセンスの1階部分は、後年のガウディらしさを期待して見るというより、若いガウディが当時の流行や装飾技法をどのように取り入れていたのかを確認する場所と言えます。
喫煙室
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| この後のガウディ作品に通じる部分は、当時男性の間と呼ばれる小部屋で天井の装飾は青を基調とした緻密の空間。 | |
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| イスラム建築の影響が強く感じらます | 当時ここで男性達がタバコをふかし雑談していました |
かつての上流階級の住宅では、家の中でも男性と女性の生活空間が分けられていることがありました。
カサ・ビセンスの中で、その代表的な空間と言えるのが、この喫煙室です。当時は男性たちが集まり、煙草を吸いながら会話を楽しむ場所として使われていました。
この部屋でまず目を引くのが、天井を覆う細かな装飾です。青を基調とした緻密な模様は、イスラム建築の影響を強く感じさせます。グラナダのアルハンブラ宮殿を訪れたことがある方なら、その繊細な装飾を思い出すかもしれません。
壁や天井を見上げると、後年のガウディ作品に見られる自然の曲線とはまた違う、当時流行していたネオ・ムデハル様式の装飾感覚がよく分かります。
カサ・ビセンスの中でも、この喫煙室は特に印象に残る見どころのひとつです。
室内にはベンチもあるので、時間があれば少し腰を下ろして、天井や壁面の装飾をじっくり眺めてみてください。細部を見ていくほど、この初期ガウディ作品が持つ独特の世界が感じられます。
2階部分
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| 1階にある男性の間の上、2階にあるのが女性の間。その天井には女性らしい絵が描かれています。 | |
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| 夫婦の寝室。1階のダイニングと基本構造は変わらず | 壁に施された植物のデザイン |
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| パステルカラーのタイルの浴室 | これが昔使われていたトイレ |
カサ・ビセンスの2階は、かつての生活空間にあたるフロアです。
邸宅の主であったビセンス家は、夫婦と養子に迎えた子ども一人の、わずか3人家族でした。そのため、邸宅といっても内部はそれほど大きくなく、部屋数も比較的限られています。
この階には、寝室や浴室など、当時の暮らしを感じられる部屋が残されています。注意して見ると面白いのが、一番広い寝室です。床のモザイクや壁面の装飾が左右で異なっているのは、夫婦それぞれの寝室が分かれていたためです。
日本から来られた方が時々勘違いされるのですが、これは夫婦仲が悪かったから別々の部屋で寝ていた、という話ではありません。
当時の上流階級の住宅では、夫婦の寝室が分かれていることは珍しくありませんでした。これは時代背景や生活習慣によるもので、ガウディの初期作品として知られるグエル邸でも、夫婦の寝室はそれぞれ別に設けられています。
また、このフロアには、1階の喫煙室に対する女性用の部屋とも言える空間があります。
1階の喫煙室が男性たちの社交空間だったとすれば、こちらは女性のための落ち着いた空間として見ることができます。装飾の雰囲気や色使いも違うため、1階の喫煙室と見比べてみると、当時の住宅内で男女の空間がどのように分けられていたのかがよく分かります。
カサ・ビセンスの2階は、派手な見どころというより、19世紀末のブルジョア家庭の暮らし方を読み取るフロアと言えるでしょう。
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3階は常設展示
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| 常設展示ではガウディ直筆の手紙や建物の図面、使われたタイルなどが展示されています。 | |
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| 模型で建設当時にあった門がここで再現されています | ガウディが描いた図面 |
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| スペイン語以外に英語による動画解説が見れます | 色々な資料が見れる液晶タッチパネルも完備 |
カサ・ビセンスの3階部分は、現在では大きく改修されており、建設当時にどのような空間だったのかをそのまま想像するのは少し難しくなっています。現在このフロアは、常設展示スペースとして使われています。
展示室には、ガウディ自筆の手紙や建物の図面、当時のカサ・ビセンスの姿を伝える資料などが紹介されています。ただし、ここに展示されているものは基本的にコピーで、オリジナル資料は別の場所で保管されています。
このフロアで特に見ておきたいのは、建設当時のカサ・ビセンスを再現した模型です。
現在の建物だけを見ていると分かりにくいのですが、模型を見ると、かつては今は失われた門や広い敷地があり、現在よりもかなり大きな別荘だったことがよく分かります。
その後、ビセンス家の衰退とともに土地は少しずつ売却され、現在のように屋敷部分だけが残る形になっていきました。これは、19世紀末に勢いを持っていた新興ブルジョア層が、時代の変化の中で少しずつ力を失っていった流れとも重なります。
3階の展示物は数としては多くなく、建築空間としての見どころも1階や2階ほど強くありません。ただし、カサ・ビセンスがかつてどのような敷地に建っていたのか、そして現在の姿に至るまでに何が失われたのかを知るには、この模型と資料展示は見ておく価値があります。
見学の最後は屋上
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| 階段を上りつめると屋上 | 屋上の半分は歩いてみて回れます |
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| 周りは建設当時無かった高いビルに囲まれてしまいました | 屋上から前の通りを見下ろす |
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| ネオムディハル様式と言えばそうですが、他の作品に比べるとガウディらしさが感じられない | |
建物内の見学の最後は、階段を上がった先にある屋上です。
屋上のすべてを自由に歩けるわけではありませんが、一部は見学できるようになっています。
ガウディ建築の屋上と言えば、カサ・ミラの煙突群や、グエル邸の色鮮やかな煙突を思い浮かべる方も多いかもしれません。それらと比べると、カサ・ビセンスの屋上はかなりシンプルです。後年のガウディ作品に見られるような彫刻的な煙突や、強い造形性はまだあまり感じられません。
そのため、屋上そのものを大きな見どころとして期待すると、少し物足りなく感じるかもしれません。ただし、ここでもカサ・ビセンスがガウディの初期作品であることはよく分かります。
後年のガウディが屋上空間をひとつの舞台のように扱っていくのに対し、カサ・ビセンスではまだ実用的で控えめな屋上にとどまっています。
そういう意味では、この屋上もまた、ガウディが後にどれほど大胆に変化していくかを知るための比較材料として見るとよいでしょう。
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ギフトショップ
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見学の最後は、地下にあるギフトショップへ進みます。
カサ・ビセンスの見学施設としてはお決まりの流れですが、正直なところ、この建物ならではの特別な商品はそれほど多くありません。
店内には、ガウディ関連の本、デザイン小物、雑貨、土産物などが並んでいます。ただし、こうした商品はバルセロナ市内の他のミュージアムショップやデザインショップでも見かけるものが多く、カサ・ビセンス限定という印象はあまり強くありません。
そのため、ショップをじっくり見るというより、見学後に少し立ち寄る程度で十分でしょう。特に買いたいものがなければ、10分ほど見れば全体の雰囲気は分かります。
カサ・ビセンスで時間を使うなら、ショップよりも喫煙室や2階の生活空間、そして建設当時の模型などをゆっくり見る方が、この建物らしさを感じやすいと思います。
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アクセス
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| 旅行者には、これと言って何も他に見るものがない地区ですが最寄りのFontana駅ですが、アクセスは悪くありません | |
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| 地下鉄駅は、出口が一つだけなので分かり易い | 駅の前の横断歩道を渡ってそのまま真っ直ぐ進むと |
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| 100メートルほど先にT路地のココを右に曲がる | すると通りの先にカサ・ビセンスが見えます |
カサ・ビセンスがあるのは、バルセロナ中心部から少し北に上がったグラシア地区です。
周辺には、カサ・ビセンス以外に大きな観光スポットはあまりありません。そのため、カサ・ビセンスだけを目的に行くと、少し外れた場所にあるように感じるかもしれません。
ただし、地下鉄を使えばアクセスは意外と悪くありません。最寄り駅は、地下鉄L3号線の Fontana 駅です。駅からカサ・ビセンスまでは徒歩数分で到着します。
バルセロナ中心部のカタルーニャ広場からは、地下鉄で3駅、所要時間は約7分です。カサ・ミラやカサ・バトリョがある Passeig de Gràcia 駅からは、地下鉄で2駅、約4分ほどです。
サグラダ・ファミリアから向かう場合は一度乗り換えが必要ですが、地下鉄の乗車時間だけで見れば約10分ほどで移動できます。また、グエル公園の最寄り駅のひとつである Lesseps 駅までは、Fontana 駅から1駅、約2分です。
そのため、カサ・ビセンスは単独で訪れるよりも、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル公園など、他のガウディ建築と組み合わせて予定を立てると回りやすいでしょう。特に、地下鉄L3号線をうまく使うと、市内中心部からカサ・ビセンス、さらにグエル公園方面へ移動しやすくなります。
チケットと入場
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| 入り口は建物の裏になり、通りから見て右側の門がそうです | 入る際にチケットチエックがあります |
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| この通路を先に進むと | 係員がチケットのコードを読み込み、そして中へ進みます |
地下鉄 Fontana 駅から歩いてカサ・ビセンスへ向かうと、まず建物の側面が目に入ります。
入口は少し分かりにくいのですが、建物の右側を見ると小さな門があります。見学者はこの門から敷地内へ入ります。事前にオンラインでチケットを購入している方は、入口でチケットを提示してください。
予約をしていない方は、そのまま奥へ進みます。通路を進んで曲がった先にレセプションの入口があり、そこで当日券を購入できます。
カサ・ビセンスは、サグラダ・ファミリアやカサ・バトリョのような人気スポットに比べると、比較的空いていることが多い場所です。そのため、ハイシーズンや特定の時間帯を除けば、必ずしも事前予約が必要というわけではありません。
むしろ、旅程がまだはっきり決まっていない場合は、無理に時間指定のチケットを取ると、かえって予定が縛られてしまうこともあります。もちろん、確実にその時間に見学したい場合や、混雑期に訪れる場合は、事前購入しておくと安心です。
チケットを事前に購入する場合は、トラブルを避けるためにも、できるだけカサ・ビセンスの公式サイトから購入することをおすすめします。
訪問動画
まとめ&アドバイス
カサ・ビセンスは、長いあいだ一般公開されていなかったガウディ建築として知られていました。
修復を終えて一般公開が始まり、現在では内部まで見学できるようになっています。ただし、実際に訪れてみると、サグラダ・ファミリアやカサ・ミラ、カサ・バトリョなど、私たちがよく知る後年のガウディ建築とはかなり印象が異なります。
外観はエキゾチックで色彩も強く、それなりに見応えがあります。しかし、内部に関しては、他の主要なガウディ作品に比べるとインパクトはやや控えめです。
もし事前にガウディの作品だと知らずに見学した場合、「これは本当にガウディなのか」と感じる方もいるかもしれません。むしろ、ドメネク・イ・ムンタネーやプッチ・イ・カダファルクなど、同時代のカタルーニャ建築家の作品に近い印象を受ける部分もあります。その意味で、カサ・ビセンスは「完成されたガウディの代表作」を期待して訪れる建物ではありません。
ガウディがまだ若く、当時流行していたネオ・ムデハル様式や装飾タイル、鉄細工などを取り入れながら、自分の建築表現を探っていた時期の作品として見ると分かりやすくなります。
バルセロナでガウディ建築を見る優先順位としては、個人的には次のように考えています。
- サグラダ・ファミリア
- グエル公園
- カサ・バトリョ
- カサ・ミラ
- グエル邸
- コロニア・グエル教会
- カサ・ビセンス
初めてバルセロナを訪れる方で、滞在日数が短い場合は、無理にカサ・ビセンスまで行かなくてもよいと思います。一方で、すでに主要なガウディ建築を見ている方、ガウディの作品の変化を追ってみたい方、あるいは初期作品に興味がある方には、訪れる価値があります。
最後に、この建物はピカソ美術館で見る「青の時代」の作品に近いものとして考えると、少し理解しやすくなります。
多くの人がイメージするピカソの代表作と、バルセロナのピカソ美術館にある若い時代の作品は、かなり作風が違います。しかし、その違いを見ることで、ピカソがどのように変化していったのかが分かります。
カサ・ビセンスも同じです。後年のガウディ作品とは違うからこそ、若いガウディが何を試し、そこからどのように独自の建築へ進んでいったのかを知る手がかりになります。
また、カサ・ビセンス周辺は、観光地化された中心部とは少し違う庶民的なグラシア地区です。近くには Mercat de la Llibertat(リベルタ市場)もあり、見学の前後に少し散歩してみると、地元の人たちの日常を感じることができます。
有名観光スポットだけを追いかけていると、なかなかこうした普通のバルセロナの雰囲気に触れる機会はありません。カサ・ビセンスを訪れるなら、建物だけを見て終わるのではなく、周辺の街歩きと合わせて楽しむとよいでしょう。
さらに周辺には、地元で人気のレストランや、各国の要人も訪れたことで知られる海鮮レストランもあります。時間が合えば、見学後にランチを組み合わせるのも良い方法です。
【関連情報】
カサ・ビセンス周辺の散策や食事については、こちらの記事も参考にしてください。
→ リベルタ市場|グラシア地区にある庶民的な市場
→ La Pubilla レストラン|グラシア地区で人気の定食ランチ
→ Botafumeiro レストラン|バルセロナを代表する海鮮レストラン
【関連情報】
若い時代の芸術家の作品に興味がある方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
→ ピカソ美術館|若きピカソの作品をたどるバルセロナの美術館
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お勧め度:★★★☆☆(3.0) |
| 住所 | Carrer de les Carolines, 18-24, 【地図はこちら】 |
| URL | https://casavicens.org/ |
| 開館 | 10:00~20:00 (12月25日、1月1日、1月6日休館、それ以外はHPで確認) |
| 料金 | 公式サイトにてご確認 |
| 最寄駅 | 地下鉄 L3 号線 Fontana(フォンタナ) 駅より徒歩4分(280メートル) |
記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。
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この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。 記事最終更新 2026.06.19 |
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