世界有数のワインの生産量を誇るスペイン、2013年には遂にフランス、イタリアを抑えワイン生産量が世界一にもなりました。
とは言ってもビールが一番ポピュラーなアルコールドリンクと言うのは日本と同じで、特に温暖化しなくても元々暑いスペインではアルコールドリンク消費量においてはビールが一番。
ここではバルセロナの地元市民によく飲まれているビールと、その中から生粋の吞兵衛のアキモト監修のもと、お勧めをご紹介します。
目次
標準スペインビール
スペインで飲まれているビールの殆どは日本と同じ東欧のチェコを発祥とする淡色でホップの苦味が効いたビール。
これらは、俗にいうピルスナータイプだって知っていましたか?
ドイツなどの北の寒いヨーロッパに比べスペインでは温暖な南欧の気候に合った、全体的にすっきりした飲み口のライトなビールが好まれる傾向にあります。
スペインビールの起源
スペインで最初にビールの製造が始まったのは1856年。
ドイツ国境近くのアルザス地方出身のフランス人、ルイス・モリッツ・トラウトマン(Moritzの創業者)によるものです。
またバルセロナ以外でも同時代スペイン各地でビールの製造が始まりましたが、そのどれもがやはりアルザス人の手によるもので、彼らの功績は非常に大きく彼らなくしてスペインビールは生まれなかったと言われています。
ちなみにアルザス地方は昔からフランス、ドイツと言う両大国の狭間で歴史に翻弄され続けた結果、そのどちらにも与しないと言う独自のアイデンティティを保ち続けてます。
ここカタルーニャ地方もフランスとスペインと言う二つの国の間に位置している事もあってよく似た背景があり、歴史を紐といてみるとその点でも興味深いものがあるのではないでしょうか。
サッカーと地元ビール
日本では東京も大阪もビールのブランドの好みに殆ど差はありませんが、スペインではサッカーと同じ様に地元のビールを好む傾向が非常に強く、バルセロナなら何も言わずにビールを頼むと「Estrella Damm」が出てくるのが普通です。
これがマドリッドやセビージャに行くと全く別の、その地方を代表するビールが飲まれています。
例えばガリシア最大都市のコルーニャでは、地元ビール「Estrella Galicia」のシェアが実に90%を超えています。
ただ近年は「Mahou」「San Migeul」「Granada」の大手3ブランドの合併や、世界規模のハイネケンの「Cruzcampo」買収などビール会社のシェア拡大競争が激化。
安売りなどの攻撃的マーケティングの結果、これまでの様に地元で安定して勝ち続けるのが困難になりつつあるのがスペインビール業界の現状とも言えます。
セルベッサとカーニャ
バルでビールを注文する時には大きく分けて2種類のビールがあります。
1つはセルベッサ(瓶ビール)、あともう1つはカウンターに設置してあるビールのサーバーから供給されるビールのカーニャ。
よく日本の旅行ガイドブックなどにはサーバーから注がれるカーニャは生ビールとなっていますが、日本ほど瓶ビールとの生との味の差は殆ど無く、その違いは単純に瓶ビールかグラスかの差ぐらいしかありません。
またセルベッサとはビール全般を指す意味もあって「セルベッサ」と頼んでも、グラスに入ったカーニャが出てくる事もよくあり特に観光客が多く利用すレストランバルではその区別が曖昧になっているような気がします。
あと、スペインのスーパーでは缶ビールと瓶ビールの2種類が並んでいます。
その理由は缶ビールは金属臭を感じると言う人が多いことで、バルで出て来るビールはあくまでも瓶ビールで缶ビールを出そうものなら暴動が起きかねないぐらいこだわりを持っています。
第一回、飲み比べ
バルセロナでよく飲まれているのはこの6種を飲み比べてみました。
雲一つ無い夏のバルセロナ。
暑い時ほどビールが美味しいを実証すべく30度を超えるこの炎天下、バルセロネータのビーチでよく飲まれているビールブランド6種を飲み比べてみました!
あまり知られていませんがバルセロナでは日本と同じようにグラスに水滴が付きます、バルセロナ以上に気温が高く夏は40度超えもざらの
マドリッドではグラスに水滴が付きません。
なぜかと言うとそれは湿度の違いによるもので、バルセロナとマドリッドの両都市に行かれる方はその違いを体感できまます。
Esrella Damm
地元最大手、バルセロナを代表するビール。最も売れているブランドのこのビールはアルザス地方出身のフランス人アウグスト・クエンツマン・ダムが1876年に創業しました。
現在FCバルセロナの主要スポンサーの一つとして知られるこのビールはスッキリ飲みやすく、クセの無い味が万人受けしている理由と言えます。
【一言メモ】
これまでの圧倒的なシェアの故にバルセロナ地元市民がイメージするビールの味の標準。ただ、最近では「Moritz」を初めとする他社の追い上げに絶対王者の地位が揺らいできています。
MORITZ
地元最大手のエストレーヤにシェアでこそ敵いませんが、創業はこちらの方が古くスペイン全土でも一番古い1856年。
ただし1970年代のオイルショックで経営が悪化、その後長らく休業していましたが2004年に再開し現在急速にシエアーを拡大中。
味はエストレーヤに比べて個性があり、ファンも多いビールです。
【一言メモ】
2004年の操業を再開した際には、フランス人の著名建築家ジャンヌーベルに本社ビルをデザインさせ、その中に専用バルを作ったり、有名バルと提携して知名度あげるなどの果敢な戦略で、これまで圧倒的なシエアを誇った「Esrella Damm」の牙城を切り崩しバルセロナに新風を吹き込みました。
San Miguel
スペイン統治時代の1890年、フィリピンのマニラで創業されたブリュワリー。
そのブランドのヨーロッパでの使用権をスペインの会社が購入、その後独自進化を遂げました。
現在はMahouなどの他のビールブランドと合併し、スペイン最大級のブリュワリーとなっています。
味はクセが無く、すっきり軽い飲み口ですが多少個性が欠けると言えなくもありません。
【一言メモ】
ユーロの通貨統合後に始まった、いわゆるスペインの不動産バブル。
その崩壊後にターゲットを低所得者にしぼり、中国人経営のバルを中心に1本1€の安売り戦略でシエアを拡大しました。
Mahou
1890年にマドリッドで創業のブルワリー。
創業当時は既に氷の製造販売をバル向けに行っていた事もあり、その販路にビールを乗せシェア拡大に成功。
現在は上記の「サンミゲル」並びに「グラナダ」と経営を統合。
飲み口はスペインビールらしくこれもスッキリですが日本人の口に一番合う味かも知れません。
【一言メモ】
レアル・マドリッドのオフィシャルビールとしても知られマドリッドを代表するビールです。
この赤いラベルのMahou以外にも、緑のラベルのMahou Clasicaも人気。会社規模と共にスペインを代表するブリュワリーと言えます。
Estrella Galicia
スペインの西の端、ポルトガルの北のガリシア地方コルーニャで1906年にメキシコからの帰国移民José Rivera Corralが創業。
スペインで最も雨の多い地方だけあって、醸造には珍しく軟水が用いられているのが大きな特徴。
飲み口はスッキリでこれも飲みやすいビール、ただ軟水仕込みによる差は正直あまり分かりません。
【一言メモ】
以前はバルセロナで全くと言っていいほど見かける事はありませんでしたが、マイナーな地方発のビールとしては良く健闘していると言えるでしょう。
特に欠点の無いビールは、これからも徐々にシエアを拡大していくものと思われます。
Cruzcampo
1904年にスペインの南、アンダルシアで創業。
セビーヤを代表するビールになっています。会社は1991年にアイルランドのギネス社に買い取られ、その後2000年にはオランダのハイネケンの傘下となり、現在アンダルシアのみならず、全スペインに展開中。
味はクセの無いビールで他のビールと同じなのですが、在住日本人の間では今一つ人気がありません。
【一言メモ】
何度も海外資本に買収されスペインの地元ビールと言うには語弊がありますが、発祥地のセビーヤを中心に根強いファンがいます。
世界第三位170カ国にビールを販売するハイネケングループですが、逆にそれが日本人には面白味に欠けると思えますが、どうでしょう?
飲み比べ結果&まとめ
今回試したビールはスーパーで普通に買える一番メジャーなビールで日本で言う所の一昔前のキリンのラガー系にあたります。
正直なところ、メジャーであるが故に個性というのはあまり感じないのですが、その中で他と明らかに違う個性があるがここバルセロナの「Moritz」。
会社のHPによると使用しているホップに他社との差があると言う事ですが、一口飲むだけで違いを明確に感じるのも事実です。
スタッフと飲み比べて一番好評なのが「Mahou」、そして一番不評なのが「Crzucampo」。
この二つのビールの評価については明らかな答えがでました。
ただ、残りのビール「San Miguel」「Estrella Damm」「Estrella de Galicia」に関しては差があまり感じられませんでした。
バルセロナで試すのはこの3本!
【Estrella Damm】
バルセロナ市民の標準ビール。
味的にはあまり特徴が無いキャラ無しビールですが、せっかく来たなら一度は試しておくと良いでしょう。
【MORITZ】
他とは全く違う味で個性的、バルセロナで近年シエアを拡大しているビール。
これは間違いなく試す価値あり。
【Mahou】
日本人に一番好評、分かり易いラガータイプのスペインビール。
クラシックもあるので機会があればお試しください。
第2回 飲み比べ
前回は、スペインの各地方ごとに一番飲まれている一般的なビールを検証しましたが、今回は各ビール会社がスペシャル版として出しているビールを徹底検証。
ちなみに、前回飲んだビールとの一番の違いは味の濃さとアルコール度数。
より個性のあるビールを飲みたい方には、こちらの方が面白味があるかと思います。
スペインの大手新聞3社がそれぞれの紙面でランク付けした「スペインビールベスト10」その10種類全部に更に、スーパーで見かけた面白そうなビールをプラスしてここでは以下、合計15種類のビールを試しました。
*最下段の3本はハイネケンが持つフランス、ベルギーのビールブランドをスペインで現地生産しているものです。
検証動画
合計5回に分けて飲み比べ検証したので、内容のわりに動画は25分近くだらだらとあります。最終選考は動画の15分あたりから始まります。
呑み比べ&まとめ
前回紹介したピルスナー、いわゆる日本で一般的に飲まれているビールがここスペインでも一番消費量が多くなっています。
その理由としてはヨーロッパでも最も温暖な気候にあった、軽く飲める薄目がスペインでは好まれているからです。
ただ最近は北ヨーロッパの寒い地方で見かける濃いダークビールが少しづつ流行りだし、また各メーカーも新たな需要の掘り起こしと言うことで一番力を入れているのがこのタイプのビールになります。
今回はそれらを15種飲み比べ、そして最終的に選んだスペインビールのベストは以下の4本。
尚、ビール党を自称される日本人の方でも濃いビールが苦手な方もおられるので、その辺りはご自分でご判断下さい。
順位を付けようと思いましたが個人差もあり、どれが一番かは言い難くここでは4本全てお勧めとします。
まあ、一本1€程と安い物ですから全部飲んでご自分の好きな物を探すと良いでしょう。
ただしアルコール度数が高い分、結構酔いますのでご注意ください、ちなみに私達二人は日本人としてはかなり飲める方だと思います。
尚、スーパーではなかなか4種類全部が置いてないのですが、そんな時はカタルーニャ広場にあるエル・コルテイングレスの地下食品売り場へ行ってみて下さい。
ところでスペインで大きな力を持っているのが、世界三位のビール会社のオランダのハイネケングループ。
既存のスペインのビールブランドを幾つもM&Aで買収。
また合計250のブランドを持つ巨大グローバル企業だけあって、自社が持つオランダやベルギーのビールもスペインで販売を始め現在急速にシエアを拡大しビール業界の勢力地図を塗り替えています。
とは言ってもそれが刺激となり地元スペインのメーカーもこれまでに無いタイプのビールを販売し出し、選択の幅が増えたのはビール党にとっては喜ばしいことです。
最近のお勧めビール
2021年頃に新発売になったこのビール「El Aguila」が最近評価が高く私達もよく飲んでいてお勧めします。
特徴は製造の過程で最終的に濾過せず作っているところで、なので飲む際は瓶もしくは缶を2,3回上下をくるくると回して、そこに溜まっている沈殿物を拡散して飲みます。
普通にスーパーで買え缶と瓶の両方があります。
記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますのでサイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。 |
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@ | この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。記事最終更新 2022.12.19 |
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