
数あるガウディ作品の中でも、サグラダ・ファミリアに次いで多くの人が訪れるグエル公園。バルセロナの街を一望できる高台にあり、建築・自然・遊び心が一体となった、ガウディらしさあふれる不思議な公園です。
ここでは、グエル公園の見どころと基本情報を分かりやすく解説していきます。
目次
概要
グエル公園とは、ガウディ最大のスポンサーであり理解者でもあったグエル伯爵が計画した、英国風の庭園住宅地です。当時ガウディは、現在で言う「ゲーティッドコミュニティー」のように、住宅地全体を外壁で囲み、外部からのアクセスを管理できる理想的な宅地計画を構想していました。
しかし、ブルジョア向けの高級住宅地でありながら公共交通機関が無かったことに加え、
- 敷地の6分の1までしか建築できない
- 勝手に木を伐採できない
など様々な規制もあり、住宅販売は苦戦。結局、建てられたのはグエル伯爵の家(現在は学校)、ガウディの家(現在はガウディ博物館)、そして実際に販売された1軒のみで、夢の宅地造成計画は1914年に断念されました。
その後、1922年にバルセロナ市が取得・管理することとなり、1984年には「アントニ・ガウディの作品群」の一つとして世界遺産に登録されました。現在では、サグラダ・ファミリア、カンプ・ノウに次いで、バルセロナで3番目に入場者数の多い人気観光スポットとなっています。
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行き方と入場口

グエル公園の主な入場口は3ヶ所あり、利用する交通手段によってアクセスしやすい入口が異なります。
① 地下鉄利用の場合
地下鉄Lesseps駅から徒歩で向かう場合は、公園左側の入口から入場します。
② ツーリストバス利用の場合
以前は正面入口からそのまま入場できましたが、現在は出口専用に変更されています。
そのため、正面入口(Carrer d’Olot)から右へ約200メートル進んだ場所にある入口を利用します。
③ タクシー利用の場合
タクシーの場合は、多くが右側入口(Carretera del Carmel)で降車します。
見学前のキーワード
グエル公園に着いてから、ガイドブックを片手に見て回るだけでも十分楽しめます。ただ、事前にいくつかのキーワードを知っておくと、建物や装飾の意味がより理解しやすくなり、また違った見え方がしてくるはずです。
ここでは、見学前に知っておきたいグエル公園にまつわるキーワードを簡単にまとめてみました。
すり鉢の土地

グエル公園は、冒頭でも述べた通り本来は住宅地として開発されたものです。ただ、その土地は山の斜面にあり、更に有料ゾーンへ向かってすり鉢状に窪んでいるため、決して宅地に適した場所ではありませんでした。
平坦な土地がほとんど無かったことから、ここでは住宅地を作るために様々な工夫が施されています。まず、一番低い場所には凹地を埋めるように巨大な貯水槽を設置。
その上には、ギリシャ神殿風の柱が並ぶ市場が作られ、更にその上を柱で支えた広場とする、三層構造になっています。また、広場裏に並ぶ石造りの柱、公園右入口近くの高架橋、「洗濯女の回廊」なども、単なる装飾ではなく道路や地盤を支えるための構造物です。
つまり、一見すると「なぜこんな物を作ったのだろう?」と思うような場所も、実はこの特殊な地形を克服するために生まれたものなのです。
組積構造

ガウディ建築は、コンクリートや鉄筋・鉄骨を多用する現代建築とは大きく異なります。基本となっているのは、レンガを積み上げて作る「組積構造(そせきこうぞう)」。
簡単に言えば巨大な積み木のような構造です。そう聞くと、子供の頃に遊んだ「将棋崩し」のような脆さを想像するかもしれません。
しかし実際には、重力・摩擦・素材の強度などを計算しながら、絶妙なバランスで建物全体が支えられています。例えば右の画像にある柱廊。表面は自然石で覆われていますが、中身はレンガ積みで出来ています。
また、ギリシャ神殿風の柱も同じく内部はレンガ構造です。ちなみにガウディが活躍した時代は、ちょうど鉄筋コンクリートが発明され普及し始めた頃。まだそれらが一般的ではなかったことに加え、日本と違い地震の少ない土地柄だったため、耐震性をそこまで強く意識する必要が無かったことも、その背景の一つと言えるでしょう。
アーチ、ヴォールト

既に述べた通り、ガウディ建築は鉄筋コンクリートや鉄骨を使わない「組積構造」で作られています。そのため、大きな空間を確保するには、中世以来使われてきたアーチ構造で天井を支える必要がありました。
さらに、そのアーチを連続させることで「ヴォールト」を作り、道路の下に歩行者用空間を生み出しています。ただ、グエル公園で見られる柱やヴォールト、ドームは、それまでの建築には無かった独特な印象を与えます。
例えば、ヴォールト天井が外側へ押し広げようとする力を受け止めるため、柱は斜めに傾き、空間全体も波打つような形になっています。そこには単なる構造物ではなく、「見る人を惹きつける空間」を作ろうとしたガウディ独特の芸術性が感じられます。
生前ガウディは、「芸術作品というものは誘惑的でなければならない。しかし、オリジナルすぎても誘惑する力を失い、それは芸術作品ではなくなってしまう」と語っています。グエル公園にも、そうした彼の思想が色濃く表れているのです。
モザイク

グエル公園に使われているモザイクは、カタルーニャ語で「トレンカディス(Trencadís)」と呼ばれるものです。これは、一度細かく砕いたタイルを、再び建物表面へ装飾として貼り付けた技法。
公園内のベンチをはじめ、市場の天井や守衛の家など、至る所に大量に使われています。なお、トレンカディスの基本コンセプトを示したのはガウディですが、それを具体的な色彩として発展させたのは、ガウディ自身も認める天才的な色彩感覚を持っていたジュジョールでした。
つまり、グエル公園の独特な色使いを語る上で、ジュジョールの存在は欠かせません。また、こんな逸話も残っています。
ある日、ガウディとジュジョールは、工事に参加していた職人達に対し、「割れたタイルを、形や色ごとに分類して籠へ入れるように」と指示しました。実はこれは、誰が最もトレンカディス制作に向いているかを見極めるための試験だったと言われています。
公園の歩き方
それでは実際にグエル公園を歩いてみましょう。主な3ヶ所ある入口の中でも、一番回りやすい「Carretera del Carmel」側入口から入って行きます。
※チケットは現在すべてネット購入のみとなっていますのでご注意ください。
入場からロザリオの道

さて、公園の中へ入ると、まず目の前に現れるのが「ロザリオの道」です。ラ・ナトゥーラ広場へ続く道の左側には、点々と石が並べられています。
これらはロザリオを象徴していると言われ、その数は一般的には54個とされています。また、この道は当時馬車も通れるように設計されていたため、石は車道と歩道を区別する目印としての役割も兼ねていました。
なお、どのガイドブックを見ても「54個」と書かれていますが、実際に数えてみると133個ありました。理由は不明です。
【ロザリオの意外な用途】

ロザリオとは、聖母マリアへの祈りを54回繰り返し唱える際、珠を指で繰りながら回数を確認するために使われる道具です。
では、なぜそんな物が必要だったのでしょうか?
理由は単純で、同じ祈りを何十回も繰り返しているうちに、「今何回目だったっけ?」と分からなくなってしまうからです。そのため、本来ロザリオは首に掛けるアクセサリーではなく、手に持って使う物でした。
実はこのような「数を数えながら祈る」という文化は、キリスト教だけのものではありません。イスラム教では99個の珠、そして日本の仏教でも煩悩の数を表す108個の数珠が使われています。
つまり宗教は違っても、人間が同じ言葉を繰り返し祈るという点では、どこか共通している訳です。ちなみに、もし当時手持ちカウンターが存在していたなら、どの宗教の人々も「カチカチ」と押しながら祈っていたのかもしれません。
広場入り口
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| ロザリオの道を進むと団体専用の入り口 | 奥に個人用の入り口 |
ロザリオの道を進むと、約3分ほどでメインゾーン「ラ・ナトゥーラ広場」の入口に到着します。ここは主に団体客用の入口となっているため、個人旅行の方はその少し奥にある一般入口から入場します。
それでは次に、グエル公園メインゾーンの歩き方を見ていきましょう。

公園入場後は、まず地図に記載されている旧有料ゾーン入口(現在は廃止)前の広場へ向かいます。
そこから最初の見どころであるベンチ①へ。ベンチの先はバルセロナ市内を一望できる展望台になっていますので、まずはここで写真撮影をしておきましょう。
その後は②「洗濯女の柱廊ポーチ」へ進みます。さらに奥へ進むと③「ねじり棒の柱」があり、そこから坂道を下っていくと正門側の④「お菓子の家(管理事務所)」に到着します。
※もし③付近が通行止めになっていた場合は、②「洗濯女の柱廊ポーチ」まで戻り、⑥市場方向へ進んでください。次に、正門前の中央階段を上ると、有名な⑤トカゲのオブジェがあります。
さらに階段を上がると、ギリシャ神殿風の円柱が並ぶ⑥市場へ。その後は市場右横の階段を上り、再び最初に入場した入口方面へ戻ります。
なお、タクシーで市内へ戻る場合は、この入口近くにタクシー乗り場があります。もし正門側から出た場合は、坂をかなり下った大通りまで行かないとタクシーは拾えませんので注意してください。
波打つベンチ

訪れる人々に人気の、メリーゴーランドを彷彿とさせる波打つトレンカディスのベンチ。また、見晴らし台を兼ねたこのベンチの先端からは、バルセロナ市内を一望できる絶景が広がります。
全長110メートルにも及ぶこのベンチは、完成までに6年もの歳月を費やしました。制作を担当したのは、ガウディと共にグエル公園の色彩世界を作り上げたジュゼップ・マリア・ジュジョールです。
このベンチ、一見すると現場で土台を作り、その上に破砕タイルを貼り付けたように見えます。しかし実際には、別工房で約2メートルごとの完成ブロックとして製作され、それを現場で連結・組み立てていきました。
現在で言うプレハブ工法に近い方法です。この工法には、
- 品質を均一に保てる
- 高い精度を確保できる
- 現場作業を軽減できる
- 工期短縮につながる
といった利点があります。それでも完成まで6年を要したことから、このベンチ制作がいかに緻密で手間の掛かる作業だったかが伺えます。
また、広場先端部分のベンチが深く凹んだ連続形状になっているのは、それぞれを独立した小空間、つまり親密な場所として機能させるためとも言われています。
そう考えると、この波打つベンチは、まるで「ガウディ流メリーゴーランド」とでも言える存在なのかもしれません。

また、ここで注目したいのがベンチに貼られたトレンカディスです。一見すると、割れたタイルを無造作に貼り合わせただけのように見えます。
しかし、よく観察していくと、
- 同系色がある程度まとまっていたり
- あえて色を崩していたり
と、どこか規則的でありながら、完全には規則化されていない絶妙なバランスで構成されていることに気付きます。さらに、このベンチには、同時代のパリで生まれ、後にピカソによって世界的に広まった「キュービズム」の前衛的手法もいち早く取り入れられていました。
つまり、この波打つベンチは単なる装飾建築ではなく、ジュジョールによる巨大な一つのアート作品だったとも言えるのです。
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【ジュゼップ・マリア・ジュジョール】 建築家でアントニ・ガウディの協力者として家具デザインや絵画などの分野で才能を発揮した総合アーティスト。「彼はあなたの助手か?」と聞かれた際に「助手ではない兄弟だと」答えたと言う逸話も残るほどガウディの信頼が厚く正に右腕と言う存在でした。ガウディの裏方とし、顔に似合わずその天才的な色彩感覚はこのグエル公園のモザイクに遺憾なく発揮され、非常に大きな役割を果たしました。 |

ベンチに使われている材料の多くは、割れたタイルや不要になった食器を再利用したものです。ただし、その中に一種類だけ、このベンチのためにわざわざ焼かれた専用タイルが存在します。
それが、ベンチ上部や、ちょうど腰が当たる部分に使われている、半円筒形の黄土色タイルです。面白いのは、焼成前の柔らかい粘土の段階で、ジュジョール自身が聖母マリアへの祈りの言葉や絵を、まるで落書きのように刻み込んでいること。
また、モザイクの中には、絶妙な色彩で配置された円盤状の装飾タイルも見ることができます。これは、ガウディ作品の中でも特に評価の高い「カサ・バトリョ」裏側テラスの装飾にも大量に使われているものです。
両者で、その使われ方や色彩感覚を比較してみるのも面白いでしょう。
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【カサ・バトリョ】 11904-1906年ガウディが改装を手掛け。ずっと未公開だった世界遺産。 |
110メートルにも及ぶこのベンチですが、装飾は単に広場側の腰掛け部分だけに留まりません。実は、ベンチ外側にまで徹底的にモザイク装飾が施されています。
特に先端部分は蛇行が大きいため、広場内側からでも外側装飾を比較的容易に見ることができます。また、広場外側の階段からは、星座をイラスト化したモザイクも確認できます。
こうした細部への徹底的なこだわりこそが、ベンチ制作だけで6年もの歳月を要した大きな理由なのでしょう。ある意味、この執念とも言える作り込みこそが、ガウディとジュジョールという最強コンビの真骨頂なのかもしれません。

柱廊ポーチ

広場を出て横の階段を下りると、「洗濯女の回廊」と呼ばれる場所へ出ます。ここは、傾斜地となっている公園内に道路を通すために作られた擁壁ですが、ガウディのこだわりはここでも遺憾なく発揮されています。
まず建設にあたっては、できるだけ自然な地形の傾斜を残すことを重視。さらに、その道路下部分を利用して、歩行者が通れる柱廊ポーチを作りました。
なお、「洗濯女」の像は、公園内で唯一の人間像です。おそらくガウディは、ギリシャ彫刻の「奉納像」からインスピレーションを得たと言われています。この回廊では、最初の「見学前に知っておきたいキーワード」で触れた「組積構造」を思い出しながら見てみてください。
レンガや石を積み上げ、重力とバランスだけで成立している構造だと意識して歩くと、また違った面白さが見えてくるはずです。

お菓子の家
広場を出て横の階段を下りると、「洗濯女の回廊」と呼ばれる場所へ出ます。ここは、傾斜地となっている公園内に道路を通すために作られた擁壁ですが、ガウディのこだわりはここでも遺憾なく発揮されています。
まず建設にあたっては、できるだけ自然な地形の傾斜を残すことを重視。さらに、その道路下部分を利用して、歩行者が通れる柱廊ポーチを作りました。
なお、「洗濯女」の像は、公園内で唯一の人間像です。おそらくガウディは、ギリシャ彫刻の「奉納像」からインスピレーションを得たと言われています。
この回廊では、最初の「見学前に知っておきたいキーワード」で触れた「組積構造」を思い出しながら見てみてください。レンガや石を積み上げ、重力とバランスだけで成立している構造だと意識して歩くと、また違った面白さが見えてくるはずです。

守衛の住宅

定員30人と入場制限がありますが、守衛の家は内部見学が可能です。中では、モデルニスモ時代やガウディ作品についての映像解説が流されています。
ただし、もし行列が出来ていて長時間待つようであれば、無理に入る必要はありません。内容としてはそこまで特別なものではないため、時間が限られている旅行者なら飛ばしてしまっても全く問題ないでしょう。

守衛住居と管理事務所。一見するとよく似た建物ですが、実は細かく見ると様々な違いがあります。まず一つ目が①の出窓。当時ここには守衛の家族が住んでいたため、「住居」であることを強調する意味があったと言われています。
次に②、白い窓枠周辺に貼り付けられた、まるでマーブルチョコレートのような円盤状のトレンカディス。これは単なる装飾ではなく、外から視線が室内へ向かいにくくする、プライバシー保護の役割も兼ねていたそうです。
また、塔頂部にある水玉模様のキノコ③。まるで楳図かずお氏の「まことちゃんハウス」を彷彿とさせますが、これは毒キノコをイメージした煙突です。さらに驚くのは、水玉模様の白い部分。実はこれ、コーヒーカップを逆さまにして作られています。
この奇抜なデザインにも理由があります。
コーヒー好きだったガウディは、ちょうどグエル公園建設時期に「コーヒーは身体に悪い」と考えるようになり、断 coffee を決意。その意思表示として、この「毒キノコ」の煙突を作ったと言われています。ちなみにガウディは、現在で言うかなりの健康オタクでもありました。
作品内には、健康や自然を意識したモチーフが数多く見られます。例えば、この後解説する中央階段の蛇のオブジェにも、そうした思想が表れています。次に④、建物屋根上にあるノコギリ状のオブジェ。一見ただの装飾に見えますが、実は手すりです。
内側には、左右の小テラスへ出るための通路が作られています。ただし、隙間から落ちそうで実用性には多少疑問が残ります。なお、この特徴的な手すりは、向かい側の管理事務所や中央階段周辺にも使われており、グエル公園を象徴するデザインの一つとなっています。
管理事務所

尖塔①は、ガウディが深く敬愛していたドイツの作曲家ワーグナー、そしてその庇護者であったバイエルン王ルートヴィヒ2世へ敬意を表したものと言われています。塔の青と白の市松模様も、バイエルン王国の旗が元になっています。
また、ガウディとグエル伯爵の関係も、ワーグナーと王との関係によく似ています。つまり、グエル伯爵はスポンサーとして、芸術家ガウディが才能を発揮できる場所と資金を提供した存在でした。実際、「グエル無しではガウディは世に出られなかった」とも言われています。
次に窓②③。守衛住居の窓と比べると、建物用途の違いから微妙な差が見て取れます。特に目立つのが、尖塔と同じ青白のセラミック枠で囲まれた大窓。これはガウディが「壁に大穴を開けろ」と命じて作らせたもので、朝夕の太陽光が室内へ差し込むよう設計されています。一つは公園側、もう一つは道側(東側)へ向けて配置されました。
なお、この建物は居住目的ではなかったため、部屋があるのは1階部分のみ。2階部分は左右にテラスが設けられており、守衛住居と同じく、ノコギリ状の手すり④が並んでいます。中央階段のトカゲオブジェ付近から見上げると、右側テラスから尖塔へ続く階段も確認できます。ちなみに、現在建物内部はお土産ショップとして使われています。
ただ、天井を見上げると、ガウディ建築特有の湾曲したアーチ構造を見ることができますので、そこも注目ポイントです。なお、2つのお菓子の家は近くからだと真下から見上げる形になってしまい、上部の細部が意外と見えません。向かい側の中央階段踊り場付近から眺めると、細かな装飾や両者の違いがよく分かるでしょう。
中央階段

公園正面で、まず目の前に飛び込んでくるのが中央大階段です。ギリシャ神話を元にしたシンボリズムに溢れるこの階段は、単なる通路ではありません。下界の喧騒から離れた山の上に作られた理想住宅地。その“非日常の世界”へ訪れる人々を導く、巨大な舞台装置としての役割がここには与えられていました。
また、現在ではバルセロナのシンボル的存在にもなっている大トカゲ。これは公園の泉の守り主を意味すると言われています。さらに階段中央には、ギリシャ神話でモーゼを守ったとされる蛇「ネフシュタン」、そして神話の中で“世界のへそ”と呼ばれたデルフィを象徴する石へとシンボルが続いていきます。
階段側壁へ目を向けると、昔の伝統的な化粧タイルを思わせる様々なデザインのトレンカディス・パネルが並んでいます。また、中央階段にある蛇の像背後の青いモザイクには、小さな丸い粒のような装飾が散りばめられています。
これはユーカリの実を表しており、ここでは「健康」の象徴として使われています。なぜユーカリが健康と結びつくのでしょうか?理由は、当時地中海沿岸でマラリアが広く流行していたことにあります。当時は、蚊の繁殖を抑えるため湿地を減らす試みが各地で行われていました。
そして、水分吸収力が高く土地を乾燥させるユーカリが盛んに植えられるようになります。ガウディは、そうした当時の健康思想をここに取り入れていたのです。

守衛の家にある「コーヒーカップの毒キノコ煙突」の逸話もそうですが、ガウディの健康オタクぶりには枚挙にいとまがありません。そもそも、このグエル公園がある地区名自体が「La Salut(健康地区)」。
当時の人としては珍しいほど、健康や身体について強い関心を持っていました。その背景には、幼少期に患った小児リウマチがあります。ガウディはその後遺症を一生抱えて生きることになり、健康への執着は単なる趣味ではなく、彼自身の人生感とも深く結びついていました。
実際、ガウディはこんな言葉を残しています。「若く健康な者は気を遣う必要はないかもしれない。しかし老人は特に注意し、消化の良いものを少量食べるべきだ。果物、野菜、牛乳、全粒パンは身体に良い。ただし牛乳は消化が遅いため、代わりにヨーグルトを勧める。
また、水をよく飲み、血液中の胆汁や尿素を取り除くフィルターとしての腎臓を洗うべきである。全てのフィルターは清潔でなければならない。リキュールやワインは肝臓に悪く、肉や脂肪は腎臓に悪い」
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【階段の秘密】中央の階段の構成は一番下から順に11段の階段と踊り場が3つ続き、世界のへそと呼ばれる踊り場までの数は合計するとちょうど33段あります。この33はイエス・キリストが死んだ年齢で、またサグラダファミリアには縦横斜めいずれの組み合わせで足しても33になるパネルが、受難のファザードに埋め込まれています。行かれた際に、試しに数えてみると面白いかと思います。 |
市場、貯水槽

施主であるグエル伯爵から、「この建築にギリシャ神話の要素を取り入れて欲しい」と依頼されたガウディ。そこで彼は、屋根を支える柱に古代ギリシャ建築の「ドリス式列柱」を採用しました。
また、この円柱の下には巨大な貯水槽があり、上の大広場に降った雨水を集める仕組みになっています。つまり、この市場空間は単なる装飾建築ではなく、実際に公園全体の排水システムとしても機能していました。
さらに、広場自体も古代ギリシャ劇場を思わせる半円形になっています。ここは、古代ギリシャ都市国家のように住民が集うオープンスペースとして構想されており、同時に雨水を集める役割も担っていました。

次に天井装飾に注目してみましょう。柱の間にある直径約3メートルの大きな円盤4枚は「太陽」を表しています。そして、その周囲のドーム部分に埋め込まれた直径約1メートルの14枚の装飾は「月」を象徴しています。
ガウディは、太陽や月といった天体の動きこそが、市場で売られる野菜や果物など生鮮食品の成長を支える生命の源だと考えていました。つまり、この天井装飾では自然界の生命サイクルそのものを表現しようとしていたのです。

【月を表す14の天井飾り】

一番下の写真は、モザイク装飾を拡大したものです。
ここで使われている材料は一般的なタイルだけではありません。瓶や皿、コーヒーカップ、陶器人形など、様々な日用品が細かく砕かれ装飾として使われています。しかも特筆すべきは、その多くが本来ゴミとして捨てられるはずだった廃材だったことです。
また、この天井装飾では特にガラスが多用されています。これは、市場内部で不足しがちな自然光を補うため、光を反射するキラキラした素材を意識的に使ったからだと言われています。実際に制作を担当したジュゼップ・マリア・ジュジョールは、特に青色ガラス瓶を好んで使用したことで知られています。
その他の見どころ

ここまで見てきた場所が、一般的に「グエル公園観光」のメイン部分になります。ただし、公園全体で見ると、実はこれらはあくまで一部に過ぎません。グエル公園自体は、さらに広い敷地を持っています。
とは言え、メインゾーン以外は正直そこまで強烈な見どころが多い訳ではなく、時間に余裕のある方向けと言ったところでしょう。その中でも、敢えて挙げるなら上の地図にある4ヶ所が比較的見どころになります。
それでは、ここからそれぞれを順番に簡単に解説していきます。
①高架橋

1881年、モンセラットの黒いマリア像が「カタルーニャの守護聖母」と宣言されると、カタルーニャでは巡礼の旅が大流行しました。ガウディはそこから着想を得て、グエル公園入口から頂上へ至る道を「苦行の巡礼路」として捉え、「キリスト教信仰」というテーマをここに表現しています。
この高架橋も、公園内を通る道路を支える構造物の一つです。有料ゾーンにある「洗濯女の柱廊ポーチ」と似ていますが、こちらは使用されている岩がよりゴツゴツとしていて、荒々しい印象を与えます。
また、スロープ状になった高架橋の上は散歩道となっており、途中からは遠くにバルセロナ市内を望むこともできます。
②ガウディ博物館

モデルハウスとして、ガウディの友人であるフランセスク・バランゲールによって設計されました。
1906年から1925年まで、ガウディは父親と姪と共にここで暮らしていました。1926年にガウディが亡くなった後は個人所有となりましたが、1960年以降はガウディ友の会によって管理され、現在は博物館として公開されています。公式には、ガウディ自身がデザインしたオリジナル家具などが見どころとされています。
ただし、正直なところ展示内容はかなり限られており、「ガウディの生活空間を少し見てみたい」という強い興味がある方向けです。時間や予算に余裕が無ければ、無理に入場しなくても大きな後悔はしないでしょう。
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【ガウディ博物館】 公園内には博物館もあってガウデイゆかりの展示物が置いてある… |
③石造りのヤシの木

公園大広場の後方に見える、石造りのヤシの木のような構造物。これは、公園内道路を支えるために作られた擁壁の一部です。広場からも見えていますので、わざわざ近くまで行く必要はありませんが、その際に軽く眺めておくと良いでしょう。
④カルヴァリーの丘

公園頂上にある「カルヴァリーの丘」。本来ここには礼拝堂が建てられる予定でした。しかし、分譲住宅地計画そのものが中止になったため、最終的には石器時代の墳墓を思わせるような石造りの塚が作られました。
ここからの眺めも素晴らしく、グエル公園全体や遠くバルセロナ市内まで見渡すことができます。
※この塚は近年、崩壊の危険から登れなくなりましたので特に行かなくても大丈夫です。悔いは何も残りません。
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【カルヴァリーの丘への行き方】 公園の頂上へ登る方はヒールの無い歩きやすい靴で行くようにして.. |
見どころムービ―
グエル公園の主な見どころを集めてフォトムービーを作ってみました。
まとめ&アドバイス
グエル公園は、ガウディ作品の中ではサグラダ・ファミリアに次ぐ人気スポットです。ただし、実際に訪れた方の評価は意外と分かれます。人によっては、
「思ったより規模が小さい」
「ただのテーマパークのようだった」
「期待したほどではなかった」
という感想を持つことも少なくありません。特に夏場は日陰が少なく、暑さも厳しいため、「暑い中、わざわざ来るほどでもなかった」と感じる方もいます。
実際、サグラダ・ファミリアのように、見た瞬間「ドーン!」と圧倒されるタイプの感動とは少し違います。むしろグエル公園は、
- ガウディ建築に興味がある
- 建築や構造を少し知っている
- 作品背景を事前に調べている
そういう人ほど面白さが見えてくる場所です。逆に何も知らずに来ると、
「トカゲを見た」
「モザイクベンチに座った」
「写真を撮った」
「バルセロナを一望した」
で終わってしまう可能性もあります。ここでは、少しでも興味を持って見てもらえるよう、
- 建築構造
- モザイク装飾
- 神話や宗教的意味
- ガウディの思想
なども含めて出来るだけ分かりやすく解説してきました。もしさらにご自身で調べながら歩いてみると、グエル公園に対する見え方や評価はかなり変わってくるはずです。
結局のところ、この公園は「見る人次第」の部分が非常に大きい場所なのだと思います。
|
お勧め度:19点/20点 |
| 住所 | Carrer d’Olot 【地図はこちら】 |
| URL | https://parkguell.barcelona/en |
| 電話 | 902 200 302 |
| 時間 | 9:30~18:00(3/30以降は~19:30) |
| 料金 | 公式HPで確認ください *チケット販売窓口がないのでチケットは全てネットでの購入になります。 |
| 行き方 | L4 号線 Alfons X駅からシャトルバス(運休中)、 L3 線Lessepsから徒歩約15分 もしくはバス、タクシー。詳しくは下の関連記事を参照ください。 |
| 所要時間 | 1~2時間 |
| 記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。 |
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@ | この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。。 記事最終更新 2026.06.6 |
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