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コロニア・グエル教会 未完の教会とその特徴

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ガウディと聞けば、多くの人がまずサグラダ・ファミリアを思い浮かべるでしょう。

しかし、建築家や芸術家たちの中には、ガウディの最高傑作として、むしろこのコロニア・グエル教会を高く評価する人も少なくありません。日本の芸術家・岡本太郎も、その一人でした。

今回は、ガウディ建築の核心が凝縮されたコロニア・グエル教会を、じっくり解説していきます。

概要

世界遺産コロニア・グエル教会。正式には地元カタルーニャ語で「Cripta de la Colònia Güell(コロニア・グエル地下礼拝堂)」と呼ばれ、バルセロナ郊外約15km、スペイン広場から電車で約25分のサンタ・コロマ・ダ・サルバリョ市にあります。

19世紀末、繊維業界で大成功を収めていた実業家エウセビ・グエルは、バルセロナ市内にあった自らの工場を、この何もない田園地帯へ移転する計画を立てました。そして工場だけでなく、労働者のための住宅、学校、商店、旅館、劇場、文化センター、教会を備えた理想的な工業コロニーを建設します。

その教会の設計を依頼されたのがアントニ・ガウディでした。

1898年に依頼を受けたガウディは、建物の構造を検証するための「逆さ吊り模型」の研究に最初の10年近くを費やし、実際に工事が始まったのは1908年でした。

しかし1914年、施主でありガウディの親友でもあったグエルが亡くなると状況が変わります。後を継いだ息子たちは建設に積極的ではなく、さらにガウディ自身もサグラダ・ファミリアに専念したいと考えていたため、教会は未完成のまま工事が中断されてしまいました。

本来は地下礼拝堂と上層の大聖堂からなる二層構造の壮大な計画でしたが、完成したのは地下礼拝堂部分のみでした。そのため、当初は集会や教育活動のために使われる予定だったこの空間が、そのまま教会として利用され、現在に至っています。

また、この教会の設計過程で行われた逆さ吊り模型の実験は、その後のサグラダ・ファミリア建設へと受け継がれました。そのためコロニア・グエル教会は、ガウディ円熟期の建築思想と構造実験を理解する上で欠かすことのできない重要な作品とされています。

 

はじめに

このコロニア・グエル教会は、ガウディ作品の中でも特に建築の専門家や、よほど建築に興味のある方でないと、その価値を十分に感じるのが難しい観光スポットです。

サグラダ・ファミリアのような圧倒的な迫力もなければ、カサ・バトリョのような華やかな芸術性もありません。規模も比較的小さく、一見しただけでは地味な建物に見えるでしょう。

そのため、何の予備知識もなく訪れると、正直なところ30分も持たないかもしれません。実際、見学者の多くは建物を一通り見て写真を撮った後、手持ち無沙汰にベンチへ座りスマートフォンを眺めています。

しかし、この教会には世界中の建築家や芸術家たちを魅了してきた理由があります。

そこで、せっかく時間をかけて訪れるのであれば、見学前に知っておくと面白いキーワードをいくつかご紹介します。建築の素人である私たちでも十分楽しめるよう、できるだけ分かりやすく解説していきますので、ぜひ一読してから見学してみてください。

 

キーワード

組積造(積み木工法)


現代のビルやマンションはほぼ全てが鉄筋コンクリートもしくは、鉄骨構造により建てられていますが、ヨーロッパで見かける古い石造りの建物や教会の多くは、レンガや石を積み上げて造る「組積造(そせきぞう)」と呼ばれる工法で建てられています。

この建築方法の起源は、ピラミッドに代表される古代エジプト時代までさかのぼります。その後、ローマ時代にアーチ構造が発達し、さらにアーチを奥へと連続させたヴォールト、そしてドームへと進化していきました。

こうして最終的に、ヨーロッパ観光の定番でもある大聖堂の巨大な天井を支える建築技術が生み出されたのです。この工法と現代建築との大きな違いは、建物に掛かる複雑な力を、アーチ構造を利用して「圧縮力」のみで支えている点にあります。

少々乱暴な言い方をすれば、これは巨大な積み木を絶妙なバランスで積み上げたようなものです。鉄筋コンクリートのように引っ張る力で支えるのではなく、上から押される力だけを利用して建物を成立させています。そして、この工法で教会の高い天井や大きな窓を支える際に重要な役割を果たすのが、ガウディが多用した「カテナリー曲線」です。

 

 

カテナリー曲線とは

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二本のポールに張られた鎖のたわみがカテナリーアーチ ロープのたわみ通りに切った型に積み木を載せると….

ロープや鎖の両端を持って垂らしたときにできる自然な曲線を、カテナリー曲線と呼びます。

この曲線を上下逆さまにすると、アーチ全体に圧縮力が均等に伝わる理想的な形となり、力学的に非常に安定した構造になります。そのため現在でもアーチ橋などに広く利用されています。では、ガウディは実際にどのようにしてこの曲線を設計に取り入れたのでしょうか。

まず、アーチの両端となる2点を定め、その間にロープを張ります。次に、求めるアーチの高さに合わせてロープの長さを調整し、垂れ下がったロープの頂点が所定の位置に来るようにします。

そして、その曲線の後ろに板を置き、ロープの形をなぞって板へ写し取ります。こうして重力と張力のバランスが完全に取れたカテナリー曲線を得ることができるのです。あとは、その曲線に沿って板を切り抜き、上下を逆さまにすれば、職人たちがレンガを積み上げるための型枠が完成します。

ガウディは、このカテナリーアーチをカサ・ミラやカサ・バトリョの屋根裏をはじめ、多くの作品で活用しました。その理由は、構造的に安定しているだけでなく、見た目にも美しく、さらにレンガ積みに適しているため施工しやすく、経済的でもあったからです。

しかし、ガウディ以前には、このカテナリーアーチだけを用いて建物全体を成立させた例はほとんどありませんでした。実際には補助壁や控え壁などを併用しながら建物を支えていたのです。そこでガウディは、この理想的な曲線を建物全体へ応用できないかと考えます。その壮大な挑戦が、次に紹介する「フニクラ(逆さ吊り模型)の実験」へとつながっていきます。

 

 

フニクラ実験


設計だけで約10年もの歳月を費やした逆さ吊り模型の実験。結果的には、この長い研究期間が教会を未完成に終わらせた一因ともなりました。

しかし、それほどまでにガウディが情熱を注いだこの実験こそが、コロニア・グエル教会を理解する上で最大のポイントと言えるでしょう。

その仕組みを簡単に説明すると、天井から吊るされた伸縮しない紐が、実際の建物における柱やアーチ、ドームのリブなどの構造部材に相当します。さらに、それぞれの部材に掛かる荷重を再現するため、鉛玉を布袋に詰めて所定の位置へ吊り下げました。すると紐は重力に従って自然な形を描きます。

ガウディは、この模型を上下反転させれば、建物に掛かる力が最も自然に流れる理想的な構造形態が得られると考えたのです。つまり、机上の計算ではなく、重力そのものを利用して建物の形を導き出そうとしたわけです。

ちなみに建設中には、あまりにも大胆な構造だったため職人たちから「本当に大丈夫なのか」と不安の声が上がったと言われています。その際ガウディは、自ら足場を撤去させることで構造の安全性を証明したという逸話も残されています。

 

ここまで解説してきましたが、正直なところ少し分かりにくいと感じた方もいるかもしれません。

かなり大雑把な例えになりますが、ガウディがここで目指したのは、建物を構成する全ての部材が互いに支え合い、一切の無駄なく成立する構造でした。言い換えれば、建物のどの柱も、どのアーチも、それぞれが明確な役割を持ち、力の流れの中で機能している状態です。

現実の建築では、安全性や施工上の理由から補助的な壁や構造材が加えられることも少なくありません。しかしガウディは、そうした妥協を極力排し、力学的に最も自然で合理的な建築を追求しようとしました。

10年という歳月と途方もない忍耐力を費やした逆さ吊り模型の実験は、その理想を実現するための挑戦だったのです。そして、その壮大な実験の成果が初めて本格的に形となったのが、このコロニア・グエル教会でした。

 

【こんなのも知っておくと更に興味が沸きます】

ここでは長くなるので詳しい説明は省きますが、コロニア・グエル教会を理解する上で重要となる建築素材があります。

建築のプロなら誰でも知っている基本的な素材ですが、私たち一般の観光客にはあまり馴染みがありません。しかし、それぞれの素材が持つ特徴を少し知るだけでも、ガウディがなぜその形を選んだのかが見えてきます。

■ 薄レンガ(カタルーニャ・ヴォールト)
通常のレンガよりも薄く軽量で、曲線やアーチを作りやすいのが特徴です。ガウディはこの薄レンガを巧みに利用することで、複雑な曲面や軽やかな天井構造を実現しました。

■ 石灰岩
教会の柱や外壁などに使用されています。圧縮力に強く加工しやすいため、組積造建築では古くから重宝されてきました。ガウディは石灰岩の自然な質感も積極的に活かしています。

■ セメント
石やレンガ同士を一体化させる接着剤のような役割を果たします。現代では当たり前の素材ですが、当時としては比較的新しい建築材料であり、ガウディも積極的に利用しました。

■ モルタル
セメントに砂と水を混ぜて作る建築材料です。レンガや石を固定するだけでなく、壁面や天井の仕上げにも使用されています。

■ 鍛鉄(たんてつ)
熱して叩きながら加工する鉄です。手すりや窓枠、装飾部分に多く使われています。ガウディは鍛鉄を単なる装飾ではなく、植物や自然界の生命感を表現する素材として活用しました。

これらの素材を見ていると、ガウディが単に奇抜なデザインを考えていたのではなく、それぞれの素材が持つ性質を徹底的に理解し、その特徴を最大限に活かそうとしていたことが分かります。

 

 

見学受付場所

入場チケットは、教会から徒歩3分ほどの場所にあるインフォメーションセンターで購入します。

オンライン予約も可能ですが、サグラダ・ファミリアのように完売することはほとんどないため、わざわざ事前予約する必要はありません。むしろ予約をすると入場時間に縛られるため、かえって不便になることもあります。また、事前予約をした場合でも、オーディオガイドを受け取るために結局このインフォメーションセンターへ立ち寄らなければなりません。

オーディオガイドを借りる際には、パスポートや身分証明書を保証として預ける必要がありますので、お忘れなく。ちなみに、このオーディオガイドは教会そのものの解説よりも、コロニア・グエルの村全体を巡る内容が中心となっています。教会だけを見に来た方は少し意外に感じるかもしれません。

また、インフォメーションセンターの奥には無料で見学できる小さな展示室があります。1階では、かつてここで稼働していた繊維工場や当時の労働者たちの生活について紹介されており、2階にはガウディ建築に関する資料が展示されています。

ただし、正直なところ展示内容はそれほど充実しているわけではありません。時間に余裕のある方は見学しても良いと思いますが、時間が限られている方であれば飛ばしてしまっても問題ないでしょう。

 

見学スタート

規模だけで言えば、見学時間は早い人なら30分弱、じっくり見ても1時間もかかりません。ただし、この教会は「何を見るか」を知らないと面白さが伝わりにくい建築でもあります。そこで、ここからその見どころを詳しく解説していきます。

 

外観

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ここは元々、写真左から右に傾斜する土地でした

既に述べましたが、本来のコロニア・グエル教会は地下礼拝堂と上層教会からなる二層構成の建物として計画されていました。

現在見学できる地下礼拝堂の入口の真上には、本来の教会堂の入口が設けられる予定でした。そこへは写真右側に見える階段を上って入る設計になっていました。

ところで、この建物を見ていると一つ疑問が湧きます。それは、なぜ現在の礼拝堂が「地下礼拝堂」と呼ばれているのかということです。一見すると普通に地上に建っているように見えるからです。

その理由は、この土地が元々傾斜地だったことにあります。写真では左から右へ向かって地面が下がっています。ガウディは、この傾斜地をできる限り削ったり造成したりせず、自然の地形をそのまま活かそうと考えました。そのため傾斜の上部を教会の地上階とし、傾斜の下部に現在の礼拝堂の入口を設けたのです。

つまり、私たちが現在見学している礼拝堂は、元々は上層教会を支える半地下部分として計画されていた空間だったというわけです

 

トレンカディス

外観の見どころの一つが、ガウディ建築の代名詞とも言えるトレンカディス(破砕タイル)です。地下礼拝堂の窓やその庇(ひさし)には、防水を兼ねて色鮮やかなタイルが貼られています。単なる装飾ではなく、実用性も兼ね備えたガウディらしい工夫と言えるでしょう。

しかし、この教会は建設途中で工事が中断されたため、教会裏側の窓の庇には本来貼られるはずだったタイルがありません。代わりにモルタルが塗られただけの状態で工事が終わっています。つまり、完成した部分と未完成の部分を同時に見比べることができるのです。これは他のガウディ作品ではなかなか見られない特徴と言えるでしょう。

また、他のガウディ作品との違いとして、この教会では宗教的なシンボルの表現にトレンカディスが多く用いられています。特に地下礼拝堂入口上部のモザイクには非常に小さなタイル片が使われており、聖書の言葉が表現されています。

さらに外壁の各所には、この後に紹介するAΩ(アルファとオメガ)や十字架など、キリスト教徒にとって重要な意味を持つシンボルが数多く散りばめられています。そのため、この教会では建築そのものだけでなく、こうした宗教的な象徴にもぜひ注目してみてください。

 

http://i2.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2016/12/tenecade.jpg 【トレンカディスとは】 カタルーニャ語で破砕タイル又は破砕仕上げ全般を指す言葉。元々は降雨から壁を保護する目的に始まり、次第に装飾するために利用され一種のモザイクとして使われました。ガウディ以外にもこの時代に活躍した他の建築家にも見られ、今も残るモデルニスモ建築にそれを見ることができます。特にコロニア・グエル教会では宗教的な装飾、シンボルを施すのに多く使われいます。

 

様々な素材

地下礼拝堂の外観を見てみると、一般的な教会とはまったく異なる印象を受けます。

特に目を引くのが外壁に使用されている素材です。通常のオレンジ色のレンガに加え、金属を燻したような色合いの焼過ぎレンガ、さらに溶岩のようにも見える黒い鉄鋼スラグ(製鉄の際に生じる副産物のカス)が混在しています。

こうした異なる素材を組み合わせた壁面は、まるで瓦礫を積み上げたような独特の表情を生み出しています。

ところで、なぜガウディは教会の外壁をこのような姿にしたのでしょうか。その理由の一つは、この部分が本来の教会を支える基礎部分だからです。日本のお城で言えば天守閣ではなく石垣にあたる部分であり、華やかさよりも安定感が求められる場所でした。

しかし、ガウディの発想はそこで終わりません。地面に最も近い場所だからこそ、人工的な建築物ではなく、まるで大地そのものから生えてきたかのような自然な印象を与えようとしたのです。実際に近づいて観察してみると、鉄鋼スラグで覆われた柱の色や質感が、周囲に植えられている松の木の幹と驚くほどよく似ています。

ガウディは単に建物を建てるのではなく、建築を周囲の自然へ溶け込ませようとしていました。この地下礼拝堂の外壁は、その考え方を最も分かりやすく示している部分の一つと言えるでしょう。

 

http://i1.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2020/08/IMG_2397-001.jpg1-1281 【鉄鋼スラグ】
一見すると溶岩にも見える黒い石は、鉱石から金属を精錬する際に大量に出る鉄鋼スラグです。鉄を取り出した後に残るもので、当時の人から見れば価値の低い工業廃材でした。

ところがガウディは、その荒々しく荒廃したようにも見える質感に美しさを見出します。そして壁や柱に用いることで、他の教会にはない独特の自然観を表現しました。

http://i2.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2020/08/IMG_2406-001.jpghttp://kamimura.com/wp-content/uploads/2020/08/rengga.jpg 【焼き過ぎレンガ】
普通の素焼きレンガ(写真右)よりもさらに高温で焼かれたレンガは、色が黒っぽく変化し、吸水性が低く摩耗や衝撃にも強くなります。ガウディは、この焼過ぎレンガに鉄鋼スラグ、通常レンガ、破砕タイルを組み合わせ、教会と言うよりも自然の岩場のような景観を作り出しました

 

 

リサイクル

また、もう一つの見どころとして鉄鋼スラグと同様に、廃材の再利用が挙げられます。

礼拝堂の窓に取り付けられている金網は、コロニア内の繊維工場で使われていた機械を分解してその材料を再利用したものです。不要となった部品の中から使えるものを選び出し、ここでは格子状に組み直して窓の装飾として活用しています。

 

【繊維工場】
工場はスペイン市民戦争を経て1945年にグエル家の手を離れ、新たな経営者へ引き継がれました。しかし、その後の繊維産業の衰退により、1973年に閉鎖されます。
現在、工場跡地は幾つかの中小企業のオフィスとして利用されています。また、最盛期には約1,200人いた従業員とその家族も、工場閉鎖後すべてが村を離れたわけではありません。現在でも約700人がこの地に住み続けています。
その背景には、バルセロナ都市圏の拡大があります。幸いにもこの地域は市内への通勤圏内にあり、周辺には新たな工業地帯も形成されたため、住民の流出をある程度食い止めることができました。
その結果、多くの企業城下町が消えていく中で、コロニア・グエルは現在も一つの村として存続しています。

 

 

モザイクの意味

礼拝堂入口の上部にある大きなモザイクは、この教会を代表する装飾の一つです。ただ見ただけでは「何か装飾されているな」で終わってしまいますが、実はその一つ一つにキリスト教の重要な意味が込められています。

まず白地の菱形に描かれている文字ですが、①PはPater(父)、②FはFilius(子)、③SはSpiritus Sanctus(聖霊)を表しています。そして、この三つを合わせてキリスト教の根本教義である「聖三位一体」を意味しています。

また、④中央の白抜き部分は聖母マリアの合わせ文字です。さらに⑤最上部の円形には、十字架に炎が押し寄せる様子が描かれており、キリストの磔刑(たっけい)を象徴しています。

実は、このモザイクにはまだ他にも幾つかの宗教的なシンボルが隠されています。少々分かりにくいものもありますが、よく観察すると次々に見つけることができます。

さらにモザイクをよく観察すると、この地域で採れるサクランボ、小麦、オリーブの枝葉や実、さらには椰子の葉などが描かれていることに気付きます。

そして、それらに混じって少々分かりにくいものの、キリスト教の四元徳(しげんとく)も表現されています。具体的には、

・慎慮(しんりょ):貯金箱と蛇
・正義:天秤と剣
・剛毅(ごうき):兜と鎧
・節制:パン切りナイフとワインの瓶

が描かれています。また、それ以外にもモザイク左下に見える水色の碇(いかり)は、「希望」を象徴しています。

このように、一見すると単なる装飾に見えるモザイクですが、その中には自然、信仰、そしてキリスト教の教えが幾重にも織り込まれているのです。

 

20160718003923 【三位一体説】
キリスト教の根幹をなす教義の一つで、「父(神)」「子(イエス・キリスト)」「聖霊」はそれぞれ別の位格を持ちながらも、本質的には一つの神であるとする考え方です。
一見すると分かりにくい概念ですが、「神でありながらイエスでもあり、同時に聖霊でもある」という、キリスト教独特の考え方でもあります。

宗教改革後に生まれたプロテスタント諸派も、この三位一体説については基本的に共通の立場を取っており、キリスト教において最も重要な教義の一つとされています。

 

 

壁に泳ぐ魚

礼拝堂入口の右上の壁をよく見ると、魚が描かれたモザイクがあるのに気付きます。そこに描かれた4匹の魚は、いずれもイエス・キリストを表しています。では、なぜ魚がキリストの象徴なのでしょうか。

キリストが生きていた時代、信徒たちはローマ帝国から迫害を受けていました。そのため、自分たちがキリスト教徒であることを公然と示すことができず、互いを識別するための暗号が必要となります。そこで用いられたのが魚のマークでした。

ギリシャ語で「イエス・キリスト・神の子・救世主」を意味する「ΙΧΘΥΣ(イクトゥス)」の頭文字を並べると、偶然にも「魚」という意味になったことから、魚がキリストの象徴として使われるようになったと言われています。

また一説には、人の気配を感じると素早く身を隠す小魚の姿に、迫害を避けながら暮らしていたキリストや初期キリスト教徒の姿を重ね合わせたとも言われています。

次に魚の下に描かれている【Α(アルファ)】と【Ω(オメガ)】ですが、これはギリシャ文字の最初と最後の文字です。英語で言えば「AからZまで」、日本語なら「あ、ん」に相当します。

つまり「始まりと終わり」を意味しており、魚(キリスト)と組み合わせることで、イエス・キリストが生と死、そして万物の始まりと終わりを司る永遠の存在であることを表しているのです。

 

待合の空間


礼拝堂入口の反対側、本来なら上層教会へ続く階段が設けられるはずだった場所の下には、小さな半地下空間があります。ここはスペインの田舎の教会でよく見られる待合スペースのような役割を果たしていました。

ミサが始まる前や終了後には、コロニア内の社宅に住む人々がベンチに腰掛け、世間話に花を咲かせていたことでしょう。

夏場に訪れた方なら分かると思いますが、高温になるスペインの夏でも、この半地下空間は驚くほど涼しく感じられます。当時の人々にとっても格好の休憩場所だったはずです。

また、ベンチとベンチの間隔が広く取られているのも特徴です。これは大人たちが談笑している間、その前の空間で子供たちが遊べるように配慮されたためだと言われています。

 

http://i1.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2020/08/colicoli2.jpg 【工場労働者とその家族】
コロニア・グエルを直訳すると「グエルの植民地」となりますが、この場合は工場を中心に住宅や学校、教会などを備えた工業コロニー(企業城下町)を意味します。

元々この地域は牧場しかない土地だったため、グエルは労働者を集める目的で社宅や学校などを整備しました。ただし、住居や福利厚生施設が用意されていたとはいえ、当時の労働条件は現在と比べると非常に厳しいものでした。

 

 

教会の内部

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内部に入ると、ゴシック建築の影響を受けた部分もあれば、まるで椰子の木が連なっているように見える天井、さらには「はじめ人間ギャートルズ」を思わせるような原始的な雰囲気を持つ玄武岩の柱もあります。

さらに細部へ目を向けると、植物や自然界の造形が随所に取り入れられており、その空間は一般的な教会とはまったく異質です。まさに“ガウディワールド”そのもの。ガウディ建築の真骨頂と言えるでしょう。

施主であるグエルは、この教会の建設にあたり予算面はもちろん、作品の内容についてもガウディにほぼ全面的な自由を与えました。とはいえ、芸術とは無縁だった100年以上前の工場労働者たちのための教会に、これほど独創的な空間を造ってしまうのですから驚かされます。

周囲の理解や常識に左右されることなく、自らの理想を追い求めたガウディ。その飽くなき創作意欲には、ただ脱帽するほかありません。

 

石柱の意味


教会の天井を支える柱は、どれも微妙に傾斜しており、素材やデザインも一本ごとに異なります。特に柱状節理の玄武岩をそのまま利用した柱は圧巻です。

これまでの荘厳さを重視した中世教会のイメージを完全に打ち破り、まるで原始時代の洞窟や森の中へ迷い込んだような不思議な空間を作り出しています。

 


尚、教会中央部の4本の玄武岩の石柱は、建物の中でも最も大きな荷重がかかる場所に配置されています。

ガウディはデザインだけでなく強度も重視し、レンガではなく強固な玄武岩を使用しました。もし同じ荷重をレンガで支えようとすれば、柱はもっと太くなっていたはずです。石を用いることで柱を細くでき、その結果、後方からでも祭壇方向の視界を確保することができました。

また、玄武岩の柱は一見すると自然石を適当に立てただけのようにも見えます。しかし実際には、逆さ吊り模型の実験によって導き出された力の中心線(青線)が、石柱の中心を正確に通っています。さらに興味深いことに、この教会にはほぼ垂直に立つ柱がありません。すべての柱が上からの荷重と横へ広がろうとする力のバランスの中で、わずかに傾きながら建物を支えています。

つまり一本一本が構造上の重要な役割を担っており、見た目には目立たない端の柱であっても決して飾りではありません。地震の少ないスペインだからこそ実現できた、巨大で精密な積み木細工。その極限とも言える構造が、このコロニア・グエル教会なのです。

 

【柱状節理】

マグマが冷えて固まる際に収縮し、岩石に柱状の割れ目ができる現象。

玄武岩では六角形の柱になることが多く、まるで人工的に加工したかのような規則正しい形状を見せます。日本では福井県の東尋坊が有名で、あの断崖絶壁を形作る岩も柱状節理によるものです。

 

天井を這うレンガ


煉瓦造りのアーチが天井を覆う様は圧巻。 10年もの歳月を費やした逆吊り実験の末に、最後に到達したこのアーチと先ほど紹介した柱こそが、この教会最大の見どころであり、コロニア・グエル教会がガウディの最高傑作と呼ばれる理由でもあります。

特に注目したいのが、カタルーニャ地方で古くから使われてきた薄レンガです。通常のレンガの半分ほどの厚みしかなく、日本の蒲鉾板のようにも見えるこのレンガを何層にも積み重ねることで、ガウディは複雑なカテナリーアーチを実現しました。

その姿は、まるで動物のあばら骨のよう。一見すると奇抜なデザインにも見えますが、すべては逆さ吊り模型の実験から導き出された結果であり、この独特なリブ構造が屋根を安定して支えています。

また、祭壇の左横にある階段を上がると祭壇の裏側へ回ることができます。ここは礼拝堂より一段高くなっていますが、その理由はガウディが丘の自然な地形を残そうと考え、この部分を掘り下げなかったためです。その結果、この場所だけは十分な天井高が確保できず、鉄骨を用いて天井を支える比較的簡素な造りとなっています。

なお、この空間は村の子供たちの聖歌隊が並び、讃美歌を歌うための場所でした。音が美しく響くよう工夫されており、実際に立ってみると礼拝堂全体を見渡すことができます。

 

ステンドグラス

お馴染みのジュジョールが手掛けた色ガラスから差し込む光は、この教会の見どころの一つです。花をデザインしたものと思われがちですが、実はそうではありません。教会の周囲が松林だったことから、モチーフとなっているのは松ぼっくりです。

もっとも、多くの人が花に見えてしまうのも無理はありません。なぜなら、この空間は元々礼拝堂としてではなく、子供たちの宗教教育や歌の練習、さらにはクリスマスやイースターの催しなどに使われる講堂として計画されていたからです。

そのため窓のデザインも、子供たちが親しみやすい童話の絵本のような、どこかファンタジーを感じさせるものになっています。ちなみに、この色ガラスは蝶の羽根のように開閉する仕組みになっていて、外の風を教会内へ取り込むことができます。

さらに上下左右の羽根をすべて開くと、その形は十字架となり、機能性とデザイン性が見事に融合しています。また、あまり知られていませんが、南側に並ぶ窓には日時計のような役割もあります。時間の経過とともに最も明るい窓が左から右へと移動するため、それによっておおよその時刻を知ることができるのです。

 


実は、この窓の面白さは色ガラスだけではありません。

外から見ただけでは気付きませんが、窓を支える鉄柵が差し込む光によって影となり、色ガラスの上に浮かび上がるように計算されています。その結果、単なる色ガラスの装飾ではなく、光と影が重なり合うことで、より神秘的な空間を生み出しているのです。

ガウディは建物そのものだけでなく、その中に差し込む光までも建築の一部として考えていました。

 

jujol 【ジュゼップ・マリア・ジュジョール】
バルセロナの南に位置するタラゴナ県生まれの建築家で、アントニ・ガウディの最も重要な協力者の一人です。
建築だけでなく、家具デザインや絵画、装飾芸術など幅広い分野で才能を発揮した総合アーティストでもありました。
写真を見るとごく普通のおっさんにしか見えませんが、そんな彼がデザインしたのが、この童話の世界のような色ガラスです。日本ではほとんど知られていませんが、ガウディ作品の色彩や装飾表現を語る上で欠かせない人物であり、その影響力は決して小さくありません。

 

ガウディの椅子

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教会内には、祭壇を囲むように同心円状に配置された椅子があります。

これらはガウディがコロニア・グエル教会のためにデザインしたトネリコ材の椅子です。実際に座ってみると、見た目以上によく考えられていることに気付きます。ゆっくり背もたれにもたれると背中に自然とフィットし、100年以上前の椅子とは思えないほど快適です。

建物ばかりに目が行きがちですが、ガウディのこだわりはこうした家具にも見ることができます。

 


実際に二人で腰掛けてみると、もう一つ面白いことに気付きます。

椅子は一直線ではなく、お互いの身体がわずかに外側を向くように設計されているのです。これは祈りの際に隣の人を意識することなく、それぞれが自分の信仰や内面と向き合えるようにという、ガウディらしい細やかな配慮によるものと言われています。

また、人間工学という言葉がまだ存在しなかった時代にもかかわらず、ガウディは職人たちを何度も実際に座らせながら、肘掛けの高さや角度、背もたれの反り具合、椅子の幅などを調整し、最適な形を追求しました。そのため見た目は素朴ですが、実際に座ってみると驚くほど身体によく馴染みます。

なお、現在教会内に置かれている椅子はガウディが製作したオリジナルではなく後年作られたレプリカです。本物は博物館で保管されていますが、そのうちの一脚はサグラダ・ファミリアで見ることができます。

 

【トネリコ(西洋トネリコ)】
ガウディが好んで使用したこの木は、スペインからロシアにかけて広く自生する樹木です。
成長が早く用途も幅広いため、古くから建築材や家具、木工品など様々な用途に利用されてきました。

その特徴は、硬く丈夫で耐久性がありながら、しなやかに曲げられることです。その優れた強度から、かつては飛行機のフレーム材としても使用されていました。
ガウディが教会の椅子にこの木を選んだのも、加工のしやすさと強度を兼ね備えていたからでしょう

 

聖水盤


礼拝堂の入口には聖水盤が置かれています。これは信徒が洗礼を受けたことを常に忘れないため、また聖堂へ入る前に身を清めるためのものです。教会へ入る際には、聖水に指を浸して十字を切ります。

ヨーロッパでは大理石製の聖水盤が一般的ですが、スペインでは巨大なシャコ貝が使われることも少なくありません。その理由は、フィリピンがスペインの植民地だった時代に大量のシャコ貝が持ち込まれたためと言われています。

ちなみに、サグラダ・ファミリアの生誕のファサードと受難のファサードの入口に置かれているシャコ貝の聖水盤は、施主であるエウセビ・グエルが寄贈したものです。

 

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【ヴィーナス誕生の貝】
ボッティチェリの名画『ヴィーナス誕生』で、ヴィーナスが乗っているのも大きな貝殻です。
また、スペインのサンティアゴ巡礼ではホタテ貝が巡礼者のシンボルとして使われており、現在でも巡礼路の道標などに描かれています。

 

黒マリア像

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黒マリア様の分身 こちらが本家のご本尊

礼拝堂正面右側には、カタルーニャの守護聖人として崇敬される黒マリア像があります。

本尊はモンセラット修道院に安置されており、ここにあるものはその写しです。日本で例えるなら、東大寺に大仏があっても全国のお寺にお釈迦様の仏像があるのと似たような関係です。

実際、カタルーニャの教会や礼拝堂を訪れると、この黒マリア像を見かけることが少なくありません。ちなみに黒マリア伝説によると、880年のある土曜日の午後、モンセラット山の麓に住む人々が天から聞こえる美しい歌声とともに、山の中腹に光が差しているのを目撃しました。

翌週も同じ現象が起きたため司祭が洞窟を調べたところ、そこにマリア像があったと言われています。人々は麓の村へ運ぼうとしましたが、なぜか像は重くなって動かなくなってしまいます。そこで、その場所こそ聖地だと考えられ、後に修道院が建てられました。

また黒マリアは古くから奇跡を起こす聖像としても信仰を集めており、病が治った、歩けなかった人が歩けるようになったなど、数多くの伝承が残されています。

 

1colocol 【モンセラットとコロニア・グエル教会1日攻略法】ちょっと大変ですが2か所を一日で回ってしまう裏技を詳しく解説します。 DSC_0581 【モンセラット】★★★★☆ バルセロナからのショートトリップの観光スポットとしては一番人気。

 

教会の裏

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礼拝堂の裏へ回ると側面を間近かに見ることが出来ます
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傾斜した外壁 魚とアルファーの文字
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こちらにはオメガとオブジェ P十字架に..

教会内の見学が終わったら、最後に建物の裏側へ回ってみてください。先ほど礼拝堂内から見た色ガラスを、今度は外側から見ることができます。

また、外壁に注目すると壁そのものが傾斜していることに気付くはずです。これはガウディが逆さ吊り模型の実験によって導き出した角度を、そのまま忠実に再現したためです。

さらに壁面を見ると、先ほど紹介した【Α(アルファ)】と【Ω(オメガ)】が今度は立体的な装飾として表現されています。特に魚は非常に抽象化されており、説明を受けなければサンショウウオやヤモリと見間違えてしまうかもしれません。

また、壁面には現在も用途や意味が分かっていないオブジェが残されています。ガウディは生前、自らの作品について多くを語らなかったため、その意図が今なお謎に包まれている部分も少なくありません。

実際、学芸員の方に尋ねたところ、「何を意味しているのか分からない。でも、それがガウディなんだよ」という何ともガウディらしい答えが返ってきました。

窓の上の庇に目を向けると十字架が見えますが、よく観察すると十字の上部が少し右へ曲がっていることに気付くはずです。これはP字形の十字架で、Pは Pastor(羊飼い)を意味します。聖書の中で羊飼いはキリストの象徴であり、このP十字もまたキリストを表しています。

先ほど見た【Α(アルファ)】と【Ω(オメガ)】の間には魚が配置されていましたが、キリスト教美術では魚やP十字など、様々なシンボルを用いてキリストの存在を表現します。つまりここでも、【Α(最初)】と【Ω(最後)】の間にキリストが置かれることで、キリストが万物の始まりと終わりを司る永遠の存在であることを示しているのです。

http://i2.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2020/08/pastaome.jpg http://i1.wp.com/kamimura.com/wp-content/uploads/2020/06/kohitujisan.jpg 【迷える子羊(私達)と羊飼い(Pastor)】
新約聖書の中に登場する「迷える子羊」とは、人生の様々な問題や困難に直面し、進むべき道を見失った人々を、群れからはぐれてしまった子羊に例えた表現です。一方、羊飼い(Pastor)は、その迷える子羊を正しい道へ導く存在であり、キリストを意味しています。そのためキリスト教美術では、羊飼いはキリストの象徴として数多く描かれています。

 

屋上

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礼拝堂裏から屋上への階段 黒で示された柱の場所
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この石は建設が完全に中断した後に弟子達により置かれました
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換気用の塔に付けられた鐘 向こうに見える司教の住居

高さ40メートルにもなる塔が建つはずだった教会の上層部分は、現在ほとんど何も残っていません。本来は教会の床になるはずだった場所が、今では礼拝堂の屋根、つまり屋上となっています。

まず目に入るのが、まるでギリシャ神殿の遺跡を思わせる石灰岩の石積みです。ここが本来の教会の正面入口になる予定だった場所でした。また、途中まで造られていた塔に取り付けられた鐘も見ることができます。

本来、鐘はこのような位置に設置されるものではありません。しかし工事が途中で中断されてしまったため、村人たちが礼拝を行えるよう、ガウディの弟子たちが応急的に取り付けたものです。この鐘を見ると、コロニア・グエル教会がいかに未完成のまま終わったかがよく分かります。

逆さ吊り模型の研究に10年を費やし、その後ようやく始まった建設も、6年かけて完成したのは地下礼拝堂のみ。結局、村人たちは16年待たされたにもかかわらず、本来の教会を目にすることはありませんでした。芸術的には偉大な挑戦だったのでしょう。しかし礼拝の場を待ち続けた村人たちの立場で考えると、この鐘を見ながら少し複雑な気持ちにもなります。

ところで、本来キリスト教会は祭壇をエルサレムの方向へ向けることが多く、バルセロナから見るとその方角は南東になります。そのため一般的には祭壇が南東、入口が北西に配置されます。しかしコロニア・グエル教会は、サグラダ・ファミリアと同じく逆向きになっています。

理由は単純で、ガウディにとっては宗教的な慣習以上に「光」が重要だったからです。南側から自然光を多く取り入れることを優先した結果、祭壇はエルサレムとは反対方向を向くことになりました。

後年のガウディは非常に信心深かったと言われていますが、それでも建築に関する信念だけは決して譲りませんでした。その頑固さはここにもよく表れています。もっとも、未完成に終わったこともあり、この屋上自体に見どころはそれほど多くありません。実際には、周囲の景色を眺めながら未完の教会に思いを馳せる場所と言った方が近いでしょう。

CIMG9014 「カテドラル」★★★★☆ バルセロナで最も格式高い大聖堂は市民の心の故郷と言える教会です。

 

ガウディの十字架

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ガウディがデザインした十字架はどの方向から見ても十字
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スマホで動きながら撮る人 ミラーリェス邸の石門

1902年にガウディがデザインした鉄細工の二重十字架が、教会入口の右側に立っています。

試しに十字架の周りを歩きながら眺めてみてください。不思議なことに、どの角度から見ても十字架の形に見えるよう工夫されています。

平面ではなく立体としてデザインされたガウディらしい遊び心と言えるでしょう。ちなみに、ここにあるものはレプリカで、オリジナルはバルセロナ市内のミラリェス邸の門の上で見ることができます。

20150115210012b72 【ミラーリェス邸の石門】★☆☆☆☆ アントニオ・ガウディによってデザインされた門で、作られたのはグエル公園と.…

 

村を歩く

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学校として作られた建物 昔の雰囲気を残す労働者住宅
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グエル教区を除くこの村の建物の中では、一番の見物となる家

工場労働者のために造られたコロニア内には、現在も当時のモデルニスモ建築が残っています。

建物の多くは今も住居として使われており、また学校も柵で囲まれているため内部を見学することはできませんが、外観は自由に見ることができます。もちろん、これらはコロニア・グエル教会のような必見の建築というわけではありません。しかし、せっかくここまで来られたのであれば、村を散策しながら眺めてみるのも悪くないでしょう。

ちなみに、これらの建物は主にガウディの弟子であり右腕とも言われたフランセスク・ベレンゲールと、ジョアン・ルビオによるものです。特にベレンゲールは、グエル公園内にあるガウディの家(現在のガウディ博物館)を設計した建築家として知られています。

実は、ガウディ本人が設計した建物は教会だけです。村の住宅や学校などの大半は弟子たちによるもので、ここからもガウディが教会建設に専念していたことがうかがえます。

IMG_7854 ガウディ博物館★☆☆☆☆ 公園内には博物館もあってガウデイゆかりの展示物が置いてある…

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グエル教会のオーディオガイド付きチケットを購入すると、村の散策用マップがもらえます。

見学は、この地図に赤線で示されたルートに沿って進みます。ただ、全部を真面目に回ると少々だれます。

個人的には、以下の4か所だけ見ておけば十分ではないかと思います。

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⑫ カ・ロルダル邸 ⑥ 前の中央広場
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⑦ 学校 ⑧ カ・レスビナル邸

⑫ カ・ロルダル邸
一見すると一軒家ですが、実は中央で左右に分かれた二世帯住宅です。

⑥ 中央広場
村の中心となる広場で、中央には工場の創設者エウセビ・グエルの銅像が立っています。

⑦ 学校
現在も利用されているため内部には入れませんが、モデルニスモ建築らしい可愛らしい外観を見ることができます。

⑧ カ・レスビナル邸
村を散策するなら、個人的にはここが一番のおすすめ。コロニア・グエルの住宅建築を代表する建物で、写真映えもするベストスポットです。

 

社宅を見ると

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 偶数と奇数の番号の家が並ぶ  窓枠デザインが微妙に違います
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 昔の社宅は、日本で言うところの、いわゆる長屋の様な感じ

村の中を散策していると、バルセロナ市内観光では気付かないような発見があります。

例えば、グエル教会から⑫カ・ロルダル邸へ向かう途中に並ぶ昔の社宅(長屋)。道を挟んで建物が並んでいますが、一方は②④⑥⑧と偶数、反対側は①③⑤⑦と奇数になっています。

実はこれは現在のバルセロナ市内でも同じで、スペインでは通りの片側が奇数、反対側が偶数という番号の振り方が一般的です。

また、この長屋で面白いのが建物の構造です。隣の家との間にある小さな入口から階段を上がると、左右にそれぞれ別の玄関があり、一つの建物に上下二世帯が住む造りになっています。家の番号を見ると「6 Bis」「8 Bis」などと書かれていますが、この Bis は同じ番号の追加住戸を意味しています。

ちなみに、この村の建物が凝ったモデルニスモ建築を含めてほぼすべてレンガ造りなのは、工場付属の住宅地だったためです。経済性を重視し、当時最も安価だったレンガが大量に使われました。とはいえ、窓枠の形を少しずつ変えたり、装飾に変化を付けたりするあたりに、芸術を愛したグエルらしさを見ることができます。

bcnmapppa 【バルセロナの歩き方】 グーグルマップは便利ですが、更に街の仕組みが分かると完璧!

 

心霊スポット

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 800年前に作られた砦の跡、ちょっと落書きが残念ですが…
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 グエル教会から僅か4分ほど  暗くなると更に雰囲気が

観光客にはほとんど知られていませんが、地元スペイン人の間では意外と有名なのが、コロニア・グエル教会から徒歩4分ほどの場所にある⑰サルバナ館です。

現在は廃墟となっていますが、その起源は12世紀に築かれた砦にまで遡ります。ちなみに、このサルバナ館は地元では知る人ぞ知る心霊スポットとしても知られています。

「誰もいないのに腕を引っ張られた」「金縛りにあった」などの体験談が語られており、テレビ番組やYouTubeでも度々取り上げられています。

興味のある方は、下の動画を参考に駐車場横の小道から簡単に行くことができます。ただし、建物は老朽化が進んでおり、内部には崩落の危険があります。見学は外観のみに留め、絶対に中へ立ち入らないようにしてください。

 

 

村で食べる

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Bar Restaurant Ateneu Unió
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BAR SPORT Restaurant Capritx

見て回るのに1時間も掛からない小さな村ですが、休憩やランチができる場所を紹介しておきます。

まず中央広場にある「Bar Restaurant Ateneu Unió」。店内には一昔前のスペインらしい雰囲気が残っていて、特に暖かい季節なら広場を眺めながらテラス席でゆっくり過ごすのがお勧めです。ただし、食事を目当てに行くというよりは、コーヒーやビールなどドリンク利用向きのお店でしょう。

次に公園横の「BAR SPORT」。こちらには日替わり定食があり、軽く昼食を済ませるには十分です。暖かい季節は店内よりテラス席の方が気持ちよく過ごせます。

最後に村で唯一のレストラン「Restaurant Capritx」。教会のすぐ近くにあり、料理も悪くありません。特にロブスターのリゾット(Arroz con bogavante)は、ご飯料理ということもあって日本人には比較的馴染みやすいと思います。

とはいえ、正直なところコロニア・グエルは食事を目的に訪れる場所ではありません。個人的にはカフェやビールなどで軽く休憩し、時間に余裕があるならバルセロナへ戻ってから昼食を取る方がお勧めです。

 

アクセス方法


コロニア・グエル教会へのアクセスは、地下鉄1号線と3号線が乗り入れるスペイン広場駅(Plaça Espanya)が起点となります。

一般的には、カタルーニャ鉄道(FGC)のスペイン広場駅からコロニア・グエル駅まで移動し、そこから徒歩で教会へ向かいます。ただし、この路線はモンセラットへ向かう列車と同じため、時間に余裕がある方であればコロニア・グエルとモンセラットを1日で見学することも可能です。

そこでここでは、通常の行き方に加え、人気の郊外観光地モンセラットと組み合わせて訪れる方法についても解説します。

基本編

バルセロナ発➡コロニ・アグエル駅➡コロニア・グエル教会
一番オーソドックスな行き方です、詳細は以下をご覧ください。

CIMG2494 【グエル教会への行き方】 コロニアル・グエル教会までの行き方を徹底解説します! IMG_0993_201504140 【スペイン(エスパニア)広場】★☆☆☆☆ バルセロナの陸の玄関口スペイン広場は同時にコロニアグエル教会、モンセラットへの起点。

+モンセラット編

バルセロナ発➡モンセラット➡コロニア・グエル駅➡コロニア・グエル教会
モンセラットとコロニア・グエル教会を一日で観光して回る 注意)モンセラットと合わせて一日で回る方法は、それなりに時間も掛かり疲れる方法です。

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見どころムービ―

コロニア・グエル教会の主な見どころをフォトムービーにまとめました。

 

 

まとめ&アドバイス

教会自体は未完成ということもありますが、仮に完成していたとしても規模はそれほど大きくありません。そのため、何度も述べてきたように、サグラダ・ファミリアを初めて見た時のような圧倒的なインパクトを期待すると肩透かしを食らうでしょう。

しかし一方で、ガウディの死後に他人の手によって建設が続けられているサグラダ・ファミリアとは異なり、このコロニア・グエル教会は100%ガウディ自身の思想と実験の成果が形になった建築とも言えます。

そういう意味では、ガウディ好きなら一度は見ておく価値のある作品でしょう。ただし、建築に特別な興味がない方であれば、正直なところ10分も見れば十分かもしれません。

また、バルセロナから地下鉄と電車を乗り継ぎ、さらに駅から歩いてまで訪れる価値があるかと聞かれれば、人によって評価が分かれるところです。特に初めてのバルセロナ旅行で滞在日数が限られている場合は、優先順位をよく考えた方が良いでしょう。

なお、日曜日の11時~12時頃はミサが行われるため、礼拝堂内の観光見学はできません。オーディオガイドには日本語もありますが、教会そのものの解説はそれほど多くなく、大半は村の建物巡りの説明です。また全て聞くと1時間半近く掛かりますので、利用するかどうかはお好みで選んでください。

ちなみに、教会以外の建物については、特別な名建築というよりは一般的なモデルニスモ建築です。あまり過度な期待はしない方が良いでしょう。

以上、コロニア・グエル教会の解説でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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あと話は変わりますが、もしモンセラットと合わせて効率良く回りたい方は、バルセロナウォーカー主催の「モンセラット+コロニア・グエル半日ツアー」をご利用ください。

専用車でホテルまでお迎え、お送りいたします。ツアーには当サイトを運営し、この記事を書いたカミムラ、もしくは日本人スタッフが同行します。また、旅程がタイトで時間が取れない方でも、午後発のフライトをご利用の場合は、空港送迎の途中に立ち寄ることも可能です。

ホテルから空港、あるいは空港からホテルへの移動時間を利用し、約2時間でコロニア・グエルを見学できますので、ご興味のある方はお問い合わせください。……と、最後にちゃっかり宣伝しておきます。

 

 

2-c4-grand-picasso--644x362 【厳選、お勧めオリジナルツアー】 ホテルまでの送迎がついているのでドアツードアで安心、そして楽ちんの欲張りツアー。

お勧め度:16点/20点 ★★★★☆


住所 Claudi Güell  【地図はこちら】
URL http://www.gaudicoloniaguell.org
開館時間 月~金:10:00~17:00、週末・祝日:10:00~15:00  日曜・祝日は、11:00から1時間程はミサの時間のため内部見学不可。 休館日:1/1,6 、4/13,18、12/25,26
料金 公式サイトで額人ください。 (注意)チケットはインフォメーションで購入します。教会では買えません。
最寄駅 FGCコロニア・グエル駅から徒歩10分 (詳しい行き方は下の関連記事を参照下さい)

記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。

この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。。 記事最終更新 2026.05.30

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