
世界遺産に登録されているガウディのカサ・バトリョ。そのすぐ隣に建つのが、チョコレート王の邸宅と呼ばれた「カサ・アマトリェール」です。
ここでは、グラシア通りを代表するモデルニスモ建築の一つ、カサ・アマトリェールを紹介します。
目次
概要
カサ・アマトリェールは、チョコレート製造で財を成した実業家アントニ・アマトリェール(Antoni Amatller)の邸宅です。
もともとこの場所には別の建物がありましたが、アマトリェール氏はそれを購入し、モデルニスモ建築を代表する建築家の一人、ジュゼップ・プッチ・イ・カダファルクに改装を依頼しました。
プッチ・イ・カダファルクは、建物の外観だけでなく、内装や家具に至るまで手がけ、邸宅全体を一つの芸術作品のように造り上げました。
当時の領収書は現在も残されており、それを現在の相場に換算すると、改装費は想像もできないほどの金額になると言われています。それだけ、細部まで徹底して造り込まれた邸宅だったということでしょう。
この建物の大きな特徴は、バルセロナの他の建物ではあまり見られない、フランドル風ゴシックの切妻屋根です。階段状に立ち上がる独特の屋根の形は、隣に建つカサ・バトリョとはまったく違った印象を与えます。
また、カサ・アマトリェールの華やかな装飾や色使いは、その後、隣のカサ・バトリョを改装したアントニ・ガウディにも影響を与えたと言われています。
長い修復工事を経て、建物内部は当時の様子をかなり忠実に再現する形で整えられ、2015年3月から一般公開が始まりました。
現在では、外から眺めるだけでなく、内部見学を通して、かつてのブルジョワ階級の暮らしと、モデルニスモ建築の細やかな装飾を間近に見ることができます。
ステンドグラスの扉

建物に入ると、まず正面にある美しいガラスの扉が目を引きます。色の入ったステンドグラスが使われており、外観とはまた違った華やかさを感じさせます。
カサ・アマトリェールは、外から見るだけでも十分に印象的な建物ですが、内部に入ると、こうした細かな装飾にもモデルニスモ建築らしいこだわりが見えてきます。
陽の光を通す吹き抜け

建物の入口部分には、本来なら吹き抜けになっている空間があります。
その上部にはステンドグラスがはめ込まれており、そこを通して入るやわらかな光が、邸宅へ上がる階段に差し込んでいます。

外の強い光がそのまま入るのではなく、色ガラスを通して少し柔らかくなり、内部に落ち着いた雰囲気を与えています。
こうした光の使い方にも、単なる住まいではなく、細部まで美しく見せようとしたモデルニスモ建築らしい工夫が感じられます。
当時の明るさを再現する照明

重厚な玄関の扉をくぐると、館内にはやわらかな照明が灯されています。
現在の明るい照明に慣れていると、少し薄暗く感じるかもしれません。しかし、これは当時の雰囲気を再現するためのものです。
カサ・アマトリェールが造られた時代は、まだ電気が安定して供給されていたわけではなく、ガス灯と併用されていました。
そのため、館内の照明も、当時の邸宅で感じられたであろう明るさに近づけてあります。
薄ぼんやりとした光の中に身を置くと、現代の観光施設というより、100年以上前の邸宅に足を踏み入れたような感覚になります。
メインダイニング

カサ・アマトリェールのメインダイニングは、建物の内側に配置されています。
モデルニスモ時代の邸宅では、食堂を通りに面した場所に設けることも多く、そこは道行く人々を眺めながら食事をする、社交的な空間でもありました。
ところが、カサ・アマトリェールでは、にぎやかなグラシア通り側ではなく、より静かな内側に食堂が置かれています。
そのため、外の喧騒から少し離れ、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しめる空間になっています。
華やかなグラシア通りに面した邸宅でありながら、暮らしの中心となる食堂には静けさを求めたところに、この家の特徴が表れています。
収集家だった家主

カサ・アマトリェールには、家主アントニ・アマトリェール氏のコレクションルームがあります。
彼はチョコレート製造で成功した実業家であると同時に、陶器の収集家、そして写真家としての顔も持っていました。
今回の修復では、邸宅内を撮影した当時の写真が大いに役立ったそうです。家具の配置や部屋の雰囲気を再現する上で、写真は貴重な手がかりとなりました。
ただし、写真は白黒だったため、壁の色や装飾の細かな色合いについては、当時の資料や専門家の判断をもとに再現された部分もあります。
また、この邸宅にはアマトリェール氏と娘のテレサが二人で暮らしていました。ところが、娘テレサのバスルームについては当時の写真が残っていなかったため、現在も再現されていません。
細部まで当時の姿を再現しているカサ・アマトリェールですが、こうした「分からない部分は無理に作らない」という姿勢にも、修復の丁寧さが感じられます。
レリーフで個性を表現
カサ・アマトリェールを設計したプッチ・イ・カダファルクは、建物の装飾にレリーフを多く取り入れました。
外壁に施されたレリーフには、この家にどのような人物が住んでいたのかを伝える役割があります。
例えば、家主アントニ・アマトリェール氏がチョコレート製造で成功した実業家であったこと、また収集家や写真家としての顔を持っていたことなどが、装飾の中にさりげなく表現されています。
また、部屋の入口にあるレリーフにも注目です。それぞれの部屋の用途や、誰のための部屋なのかが分かるように、入口の装飾にも意味が込められています。
つまり、カサ・アマトリェールのレリーフは、ただ美しく飾るためだけのものではありません。
建物そのものが、そこに住んでいた家族の職業、趣味、暮らしぶりを語るように造られているのです
◆外壁

◆内部

例えば、コレクションルームのレリーフには、右上に知性を表すフクロウ、左下にカタルーニャのお金を守る鳥、そして上部には収集家を表す陶器が描かれています。
また、食堂のレリーフには、右側にカニ、左側にエビ、上部には鶏が表現されています。
このように、カサ・アマトリェールのレリーフには、一つ一つ意味が込められています。
館内を見学する際は、ただ装飾として眺めるだけでなく、「これは何を表しているのだろう」と考えながら探してみると、より楽しめるでしょう。
見学はガイドツアーのみ
カサ・アマトリェールの内部見学は、基本的にガイド付きツアーで行われます。
館内は自由に歩き回るタイプの見学ではなく、決められた時間にスタートするツアーに参加して見学する形です。
ツアーには、じっくり見学できる通常のガイドツアーのほか、短時間で主要部分を見学するエクスプレスツアーが設定されていることもあります。
言語は英語、スペイン語、カタルーニャ語などが中心で、曜日や時間帯によって実施されるツアーが異なります。
ただし、見学時間、ツアーの種類、対応言語は時期によって変更されることがあります。
訪問を予定している方は、事前に公式サイトで最新のスケジュールを確認し、希望する言語と時間のツアーを予約しておくと安心です。
まとめ&アドバイス
カサ・アマトリェールは、グラシア通りにあるモデルニスモ建築の一つですが、隣のカサ・バトリョに比べると、知名度も人気もかなり控えめです。
そのため、館内は比較的空いており、落ち着いて見学できるのが大きな利点です。
ただし、裏を返せば、それだけ一般の観光客にはあまり知られていない、少し地味な存在とも言えます。
日本人旅行者の場合、どうしてもバルセロナのモデルニスモ建築といえばガウディ一辺倒になりがちです。カサ・バトリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリアに比べると、プッチ・イ・カダファルクの作品まで見に行こうという方は多くありません。
実際、カサ・アマトリェールは「せっかくバルセロナに来たなら必ず行くべき」という場所ではありません。
外観だけであれば、グラシア通りを歩きながらカサ・バトリョと一緒に見るだけでも十分楽しめます。
一方で、モデルニスモ建築に本当に興味がある方、ガウディ以外の建築家の作品も見てみたい方、当時のブルジョワ邸宅の内部装飾に関心がある方には、非常に見応えのある場所です。
華やかな観光名所というより、バルセロナのモデルニスモ建築を少し深く知るための見学スポット。
そう考えて訪れると、カサ・アマトリェールの魅力がより分かりやすいでしょう。
お勧め度:13点/20点
★★★☆☆(3.25)
| 住所 | Passeig de Gracias 41 【地図はこちら】 |
| URL | http://fundacionamatller.org/ |
| 電話 | 934 617 460 |
| 時間 | 月曜~日曜11:00-18:00 1月1日、6日、12月25、26日は休館 |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 行き方 | パセオ・デ・グラシア駅 3号線から徒歩約1分、4号線から徒歩約7分 |
| 所要時間 | 1時間 |
| 記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。 |
![]() |
@ | この記事を書いた人:アキモト 日本で社会人を経験後マドリッドへ大人の語学留学。海のあるバルセロナへ移住後、バルセロナウォーカーにて情報を発信しています。最終更新 2026.07.03 |
その他のプッチ・イ・カダファルク作品
![]() |
【カサ・マルティ】 ゴシック地区にあるモデルニスモ建築はピカソが通ったカフェとして4Gatsが有名。 |
![]() |
【サン・デ・ラス・プンシャス】 通称、針の家と呼ばれたデイアゴナル通沿いに建つ泰樹。 |
近くのお勧め
ピックアップ記事。
観光記事一覧
基本情報記事一覧
レストラン記事一覧
ショッピング記事一覧
エンターテイメント記事一覧
![]() |
【サッカー情報】 バルサ。世界屈指の人気チームを中心に解説します。 |
![]() |
【フラメンコ情報】 本場アンダルシアに負けず劣らずのレベルの高いフラメンコがここでも見れます。 |































































