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装飾ではなく空間で見せる、カタルーニャ・ゴシックの教会

サンタ・マリア・ダル・マール教会は、華やかな彫刻や豪華な装飾で見せる教会ではありません。外観も内部も比較的簡素で、初めて訪れると「思ったより地味」と感じる方もいるかもしれません。
ただ、この教会の魅力は装飾ではなく、内部に入った時に感じる空間の広がりにあります。すっと伸びる石柱、高い天井、余計な飾りの少ないすっきりとした内部。柱と柱の間隔が広いため、視界が大きく開け、教会全体がひとつの大きな空間として感じられます。
フランスの大聖堂のように細かな彫刻や壮麗な外観で圧倒するゴシックとは異なり、サンタ・マリア・ダル・マールは、カタルーニャ・ゴシックらしい簡潔さと均整の取れた空間が特徴です。派手さはありませんが、石の構造そのものがつくる静かな美しさがあります。
庶民が石を運んで築いた「海の大聖堂」

サンタ・マリア・ダル・マール教会を語るうえで欠かせないのが、バスタイシュ(bastaixos)と呼ばれた荷運び人たちの存在です。
彼らは港や市場で荷を運ぶ人夫たちで、この教会の建設では、石材を一つひとつ背に担ぎ、建設現場まで運んだと伝えられています。王や貴族の権威を示すための教会というより、港で働く人々、商人、職人、船乗りたちが支えた教会。そこに、サンタ・マリア・ダル・マールが「庶民の教会」と呼ばれる理由があります。
この物語は、小説『海のカテドラル』によって広く知られるようになりました。小説として脚色された部分はありますが、ボルン地区やリベラ地区に暮らした人々の信仰と労働が、この教会のイメージを形づくっていることは間違いありません。
内部に入ると、装飾は控えめで、空間はすっきりとしています。けれど、その石の一つひとつが、人々の手で運ばれたものだと思うと、教会の見え方は少し変わります。豪華さではなく、働く人々の力で築かれたという物語こそが、この教会の大きな魅力です。
小説『海のカテドラル』を読むと、旧市街の見え方が変わる

サンタ・マリア・ダル・マール教会を舞台にした小説に、イルデフォンソ・ファルコネスの『海のカテドラル』があります。中世バルセロナを舞台に、農奴の身分から逃れてきた少年が、リベラ地区で成長しながら、この教会の建設とともに生きていく物語です。
この小説はスペイン国内だけでなく世界的にも読まれた600万部を超えるベストセラーで、サンタ・マリア・ダル・マール教会を「海の大聖堂」として広く知らしめた作品でもあります。物語の中には、教会の石を背負って運んだバスタイシュたち、港で働く人々、商人、職人、そして中世の城壁内で暮らす庶民の姿が描かれています。
もちろん小説なので脚色はありますが、これを読んでからボルン地区や旧市街を歩くと、石畳の道や細い路地、教会の壁の見え方が少し変わります。観光名所として眺めるだけでなく、かつてこの場所で暮らし、働き、祈った人々の気配を感じながら歩けるようになるからです。
すべての方におすすめする本ではありませんが、歴史小説が好きな方や、バルセロナの旧市街を少し深く味わいたい方には、一度読んでみる価値のある一冊です。
広く澄んだ内部空間と、天井に残る内戦の記憶

サンタ・マリア・ダル・マール教会の内部に入ると、まず感じるのはそのすっきりとした広がりです。高く伸びる石柱、余計な装飾の少ない空間、そして視界を大きく遮らない広い身廊。豪華な彫刻や金色の祭壇で圧倒する教会ではなく、石の構造そのものがつくる静かな空間が魅力です。

ただし、この簡素な内部は、単に最初から何もなかったというわけではありません。スペイン内戦中の1936年、教会内部は火災に遭い11日間燃え続け、祭壇や装飾の多くが失われました。現在も天井の一部には、今もその時の焼け跡、煤が黒く残っています。
そのため、この教会の内部を見る時は、ただ「シンプルできれい」と眺めるだけでなく、かつてここにあった装飾や、内戦によって失われたものにも少し思いを向けると、印象が変わります。静かな空間の中に、バルセロナが経験した激しい時代の痕跡が残っているのです。
【スペイン内戦とは】

スペイン内戦は、1936年から1939年にかけてスペイン国内で起きた大きな内戦です。共和国側とフランコ将軍率いる反乱軍側が争い、最終的にフランコ側が勝利。その後、スペインは長い独裁体制の時代に入っていきました。
バルセロナもこの内戦の影響を大きく受けた街のひとつで、教会や修道院が襲撃されたり、空爆を受けたりした場所もあります。サンタ・マリア・ダル・マール教会もその例外ではなく、1936年に内部が焼かれ、祭壇や装飾の多くが失われました。現在のすっきりとした内部空間には、そうした歴史の傷跡も重なっています。
内戦の経緯は非常に複雑なので、詳しく知りたい方は「スペイン内戦」で調べてみてください。
光を取り戻したステンドグラス

サンタ・マリア・ダル・マール教会の内部で印象に残るもののひとつが、ステンドグラスから差し込む光です。
主祭壇側から後ろを振り返ると、聖母マリアを中心に描いた大きなバラ窓が目に入ります。晴れた日の午後、太陽が西へ傾く時間帯になると、この窓から色を帯びた光が差し込み、石造りの簡素な内部をやわらかく照らします。

この教会は、豪華な装飾で見せる教会ではありません。だからこそ、ステンドグラスの色と光がより強く感じられます。余計な飾りの少ない空間に、赤、青、黄の光が差し込むと、教会全体の印象が一瞬変わります。

また、内部には「最後の晩餐」を描いたステンドグラスもあります。派手に目立つものではありませんが、時間があれば、窓ごとの図柄をゆっくり見て回るのもおすすめです。
ステンドグラスに隠れたFCバルセロナ

そして、もうひとつ小さな見どころがあります。ステンドグラスの中に、サッカーチームFCバルセロナのエンブレムが入っている部分があります。かなり小さいので、何も知らずに見るとまず気づきません。訪れた際には、ぜひ探してみてください。
塔に登るガイドツアー

天気の良い日には、教会の塔に登るガイドツアーに参加してみるのもおすすめです。内部を見学するだけでは分からない、サンタ・マリア・ダル・マール教会の屋根まわりや、ボルン地区の町並みを上から眺めることができます。
塔の上からは、旧市街の屋根、近くのサンタ・カテリーナ市場方面、そして遠くにはサグラダ・ファミリアの姿も見えます。教会そのものを見学するというより、バルセロナの町を少し違う高さから眺める体験、と考えると分かりやすいでしょう。
ツアーはガイド付きで、所要時間は約45分。料金はひとり8ユーロです。受付は、バスタイシュの像がある入口から入ってすぐ右手にあります。
カタルーニャ語、スペイン語、英語のツアーがあり、英語ツアーは15時に設定されています。ただし、詳しい説明を聞くよりも展望を楽しみたいという方は、到着後すぐに催行されるツアーに参加してもよいでしょう。
なお、料金や時間は変更されることがあるため、訪問前に公式サイトまたは現地受付で確認してください。
豆知識:屋根の上にある小さな鐘?

塔に登るガイドツアーでは、教会の屋根の上に並ぶ、小さな鐘のような形をしたものを見ることができます。
一見すると何かの飾りのようにも見えますが、これは屋根裏や内部の空気を逃がすための通気口です。夏はここから熱気を逃がし、冬は必要に応じて通気口を覆うことで、教会内部の温度や空気の流れを調整していたと言われています。
現在のような機械式の空調がなかった時代、石造りの大きな教会では、こうした小さな工夫が内部の環境を保つ役割を果たしていました。屋上に上がった際には、景色だけでなく、こうした建築の裏側にも少し目を向けてみると面白いです。
まとめ
サンタ・マリア・ダル・マール教会は、旅行者に人気のボルン地区の中心にあり、周辺には日本人旅行者にも人気のバルやレストランが点在しています。ピカソ美術館からもすぐ近くなので、ボルン地区を散策する途中に立ち寄りやすい教会です。
バルセロナ旧市街というとランブラス通り周辺を思い浮かべる方も多いですが、個人的には、今ならボルン地区の方がまだ落ち着いて歩ける印象があります。観光地らしさはありながらも、細い路地、古い建物、バル、ショップがほどよく混ざり、旧市街らしい雰囲気を味わいやすいエリアです。
教会そのものは、サグラダ・ファミリアやバルセロナ大聖堂のように、装飾の多さで圧倒するタイプではありません。内部は比較的シンプルで、見方によっては少し地味に感じるかもしれません。ただ、その分、気軽に入りやすく、静かな石造りの空間やステンドグラスの光を落ち着いて楽しめる教会です。
また、この教会は小説『海のカテドラル』の舞台としても知られています。建築だけを見るとシンプルな教会ですが、バスタイシュと呼ばれた荷運び人たち、港で働く人々、そして中世バルセロナの庶民の物語を知ると、見え方が変わってきます。
バルセロナの旧市街を少し深く味わいたい方、ボルン地区の歴史に興味がある方は、訪問前か旅行後に『海のカテドラル』を読んでみるのもおすすめです。読まなくても観光はできますが、読んでからこの教会や周辺の路地を歩くと、ただの古い教会や石畳の道が、少し違って見えてくるかもしれません。
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お勧め度:16点/20点 |
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| 住所 | Pl.de Santa Maria 1 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.santamariadelmarbarcelona.org/home/ |
| TEL | 933 10 23 90 |
| 見学時間 料金 |
公式サイトにてご確認ください。 |
| 最寄駅 | 地下鉄4号線JaumeⅠ(ジャウマ・プリメ)駅から徒歩約5分 |
| 記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。 |
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@ | この記事を書いた人:アキモト 日本で社会人を経験後マドリッドへ大人の語学留学。海のあるバルセロナへ移住後、バルセロナウォーカーにて情報を発信しています。最終更新 2026.06.29 |
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