
保存食の缶詰。不思議なことに、スペインは海鮮物の缶詰を中心に世界一の数と種類を誇ります。そんなスペインの厳選缶詰をここで一挙紹介します。
目次
缶詰大国スペイン
保存食というイメージの強い缶詰ですが、ここスペインでは海鮮缶詰を中心に世界有数の種類と品質を誇ります。
価格も実にさまざまで、スーパーで手軽に買える1ユーロ前後のものから、高級食材を使用した100ユーロを超える缶詰まで幅広く揃っています。
また、スペインでは缶詰は単なる保存食ではなく、立ち飲みスタイルのバル「ボデガ」で楽しまれる定番のおつまみでもあります。日本のガイドブックでも紹介される老舗の
El XampanyetやQuimet & Quimetでは、厳選された缶詰を使った一品を味わうことができます。
もちろん、缶詰は調味液とともに密封して加熱保存するという製法上、その場で調理した料理とまったく同じ味わいになるわけではありません。しかし、その製法だからこそ生まれる凝縮感や熟成したような旨みがあり、缶詰ならではの魅力として多くの人を惹きつけています。
開けたらすぐに食べられ、常温で長期保存できるうえ、瓶詰めのように割れる心配もありません。そのため、日本へのお土産としても人気があります。
記事の最後では、数あるスペインの缶詰の中からおすすめの商品をご紹介していますので、購入の際の参考にしていただければ幸いです。
産地は大西洋
多種多様なスペインの缶詰ですが、その主役は何と言ってもシーフードです。
バルセロナも海に面していますが、地中海は大西洋に比べると塩分濃度が高く、栄養塩類が少ないためプランクトンが育ちにくい海として知られています。そのため生物量も比較的少なく、海の面積あたりの漁獲量は瀬戸内海の約25分の1、わずか4%程度とも言われています。

それではスペインの海産物はどこで獲れるのでしょうか。答えはスペイン北西部、ポルトガルの北側に位置するガリシア地方です。
大西洋に面したこの地域はスペイン最大級の漁業地帯であり、国内で流通する海産物の多くがここで水揚げされています。当然ながら缶詰メーカーもこの地域に集中しており、ムール貝、イカ、タコ、イワシ、ツナ、アンチョビなど数多くの商品が生産されています。
一方で、海鮮缶詰だけではありません。
スペイン内陸部のマドリードやリオハ地方では、豆料理や肉の煮込みを詰めた伝統的な缶詰も作られています。また、スペイン特産のオリーブやアーティチョークなどの野菜類、さらにはソーセージ類まで含めると、その種類は実に千種類以上とも言われています。
ここでは、その無数とも言えるスペイン缶詰の中から、代表的な商品をご紹介していきます。
缶詰の主な種類(貝)
ムール貝

【ムール貝 / Mejillones】
スペインの海鮮缶詰の定番中の定番が、ムール貝です。
地中海沿岸でも広く養殖されており、価格も手頃なため、スペインでは日常的によく食べられています。
缶詰では、エスカベチェ(escabeche) と呼ばれる酸味のあるマリネ風の味付けが一般的。ビネガーとパプリカの風味が効いた、スペインらしい味わいです。
そのほか、玉ねぎの甘みを効かせたガリシア風ソース入り、素材の味を楽しめるナチュラルタイプなどもあります。
アサリ

【アサリ / Almejas】
ムール貝に比べると、日本人にもなじみのあるアサリ。
ムール貝の缶詰はエスカベチェやオイル漬けなど味付きのものが多いのに対し、アサリの缶詰は水煮タイプが一般的です。
ちなみに、これは他の貝類の缶詰にも共通しますが、貝のサイズが大きくなるほど値段も高くなります。大粒のものになると、小粒のものの3〜4倍の価格になることも珍しくありません。
ザル貝

【ザル貝 / Berberechos】
貝殻は日本の赤貝に少し似ていますが、中身は写真でご覧の通りまったく別物です。
アサリに比べると小ぶりですが、独特の甘みと磯の香りがあり、スペイン人にとても人気のある貝です。現地ではワイン蒸しにしたり、オリーブオイルで軽く炒めたりして食べられます。
缶詰では水煮タイプが一般的で、レモンを少し絞るだけでも立派なおつまみに。貝類の缶詰の中では、比較的高価な部類に入ります。
マテ貝

【マテ貝 / Navajas】
日本人がスペインで目にする貝の中でも、その見た目に一番驚くのがこのマテ貝です。
細長い独特の形をしているため、最初は少しグロテスクに感じるかもしれません。ただし、日本にも西日本を中心に広く生息しており、九州の佐賀や熊本など一部の地域ではよく知られた貝です。
スペインでは鉄板焼きやワイン蒸しでも食べられますが、缶詰として販売されているものは水煮タイプが中心です。数は多くありませんが、オイル漬けの商品もあります。
海老貝

【海老貝/Langostillos】
スペインでは俗に「海老」と呼ばれることもある Langostillos。
この貝の特徴は、何と言っても独特の食感です。噛むと中が少しぬるっとしていて、他の貝ではあまり見かけない不思議な口当たりがあります。
このほか、ホッキ貝とトリ貝の中間のような Navajuelas や、南米チリ産の Machas なども缶詰として販売されています。
ミニホタテ貝

【ミニホタテ貝 / Zamburiñas】
巡礼の道のシンボルとしてもおなじみのホタテ貝ですが、スペインでは日本のように大きなホタテが日常的に流通しているわけではありません。
その代わりによく見かけるのが、ザンブリーニャス(Zamburiñas) と呼ばれるミニホタテです。比較的手頃な価格で買えることもあり、海鮮缶詰の定番の一つとなっています。
味は日本のホタテほど濃厚ではなく、どちらかというとソースの味を楽しむタイプ。トマトソースやガリシア風ソース入りの商品が多く、パンや白ワインともよく合います。
主な種類(イカ、タコ)
イカ(烏賊)

【イカ / Calamares】
日本からスペインへ輸出されるものの多くは工業製品ですが、スペインから日本へ輸出される代表的な食品の一つが、イカやタコ、マグロなどの海産物です。
スペインでもイカは非常によく食べられており、缶詰としてもポピュラーな存在です。販売されているものは味付きのオイル漬けが中心で、水煮タイプはほとんど見かけません。
ちなみに、白いご飯にそのままかけると、少々ジャンクではありますが、下記のミニイカ同様なかなかいけます。
ミニヤリイカ

【ミニヤリイカ / Chipirones】
見た目は日本のホタルイカにも似ていますが、チピロンは大西洋側で獲れる小型のヤリイカです。
スペインでは、フリートと呼ばれる揚げ物として食べるのが一般的。ただし、さすがに揚げ物を缶詰にすることはできないため、缶詰ではオイル漬けやイカ墨煮として販売されています。
上記のイカ缶詰と同じく、ご飯に混ぜて食べると即席スペイン飯の出来上がり。少しジャンクですが、意外とクセになる味です。
タコ

【タコ / Pulpo】
世界的に見るとタコを日常的に食べる国は多くありませんが、日本と同じくスペインでもタコは人気の食材です。
なかでも定番のタパスとして知られるのが、ガリシア風タコ料理の プルポ・ガジェゴ(Pulpo gallego)。日本のタコに比べるとかなり柔らかく、食感は少し違いますが、美味しい店で食べると本当にいける一品です。
ただし、缶詰のタコはオイル漬けが中心で、プルポ・ガジェゴとはまったく別物。あくまで缶詰ならではのおつまみとして楽しむのがおすすめです。
魚、魚卵
ツナ

【ツナ / Atun】
日本でもおなじみのシーチキン、いわゆるツナ缶です。
スペインのツナ缶は大きく分けて2種類あります。一つは日本でも一般的なマグロを使ったもの。もう一つは Bonito del Norte と呼ばれるビンナガマグロを使ったもので、こちらの方が価格は高めです。
味付けをしていないオイル漬けが一般的ですが、少数ながら酸味のある エスカベチェ タイプもあります。
マグロのトロ

【マグロのトロ / Ventresca】
ツナ缶の中でも、マグロの腹身(トロ)の部分だけを使った高級タイプ。日本ではあまり見かけませんが、スペインでは近年スーパーでも見かける機会が増えてきました。
「トロ」と聞くと脂がたっぷり乗った刺身をイメージしますが、缶詰のベントレスカはそこまで脂っこくはなく、上品なコクとしっとりした食感が特徴です。
一般的なツナ缶に比べて身が大きな板状になっており、ほぐれにくいため見た目にも高級感があります。そのまま食べるだけでも十分美味しく、パンにのせたり、サラダに添えたりするだけでちょっと贅沢な一品になります。
オイルサーディン

【オイルサーディン / Sardinas】
シーフード缶詰の定番中の定番といえば、やはりイワシの缶詰。
シンプルなオイル漬けから、トマトソース味、酸味のあるエスカベッシュ、ピリ辛のピカンテソースまで、味のバリエーションも豊富です。
基本的には貝類の缶詰と同じく、イワシのサイズが大きくなるほど値段も上がる傾向があります。小ぶりのものは気軽なおつまみに、大きめのものは身もしっかりしていて、少し贅沢感があります。
小鰯のオイルサーディン

【小鰯のオイルサーディン / Sardinillas】
基本的にはオイルサーディンと同じイワシの缶詰ですが、こちらは小型のイワシだけを使ったもの。スペインでは魚の大きさによって別の商品として扱われており、「サルディニージャス」は独立したジャンルとして親しまれています。
缶によっては驚くほど小さなイワシがぎっしり詰まっており、多いものではメダカほどのサイズのイワシが一缶に40匹近く入っていることも。その整然と並んだ姿は、思わず見入ってしまうほどです。
味わいは通常のオイルサーディンよりも繊細で、骨まで柔らかく食べやすいのが特徴。おつまみとしてそのまま食べるのはもちろん、パン・コン・トマテにのせるだけでも立派な一品になります。
なお、青魚系の缶詰では、細長い魚を使ったサヨリの缶詰(Agujas)を見かけることもあり、こちらも缶詰好きにはぜひ試してほしいアイテムです。
鯖 サバ

【 サバ/ Caballa】
日本では味噌煮のイメージが強いサバ缶ですが、スペインでは味噌味のようなバリエーションはほとんどなく、基本はツナやオイルサーディンと同じくオイル漬けが中心です。
値段は比較的手頃で買いやすいのですが、味や個性という点では、他の華やかなシーフード缶詰の中ではやや目立ちにくい存在かもしれません。
とはいえ、クセが少なく食べやすいので、サラダに加えたり、パンにのせたり、軽いおつまみにするには便利な缶詰です。
なお、同じ青魚系ではカツオの缶詰(Melva)もあります。スペインではややマイナーですが、見かけたら試してみる価値のある一品です。
ウナギ稚魚

【ウナギ稚魚 / Angulas】
スペインを代表する高級珍味のひとつが、ウナギの稚魚「アングラス」。キロあたり500〜600ユーロほどすることも珍しくなく、季節の初物になると3,000ユーロ近い値が付くこともある高級食材です。
本物のアングラスを使った缶詰もありますが、1缶で5,000円ほどすることもあり、気軽に買えるものではありません。
そこで庶民的に親しまれているのが、イミテーションの「グラス(Gulas)」。魚肉のすり身と小麦粉などで作られたもので、本物とは別物ながら、アングラス風の雰囲気は十分に楽しめます。
にんにく、オリーブオイル、唐辛子と一緒に軽く炒めると、バスク風の定番おつまみになります。
アンチョビ

【アンチョビ/Anchoa】
日本でいうイカの塩辛に近い存在とも言えるのが、スペインのアンチョビ。塩気が強く、少量でもしっかり旨味があり、おつまみや料理のアクセントとして使われます。
値段はピンからキリまであり、味も価格にかなり比例します。安いものは塩気が強く単調になりがちですが、良いものは熟成されたイワシの旨味が濃く、生ハムのような奥深さがあります。
なお、缶詰といっても保存方法は少し特殊で、常温保存できないものが多く、基本的には冷蔵品。お土産として日本に持ち帰るなら、気温の低い冬場に限られると考えた方が安心です。
そのままパンにのせるだけでも十分美味しく、トマトやオリーブ、バターとも相性抜群です。
魚卵

【魚卵 / Huevas】
タラコや明太子など、日本では食卓と切っても切れない存在の魚卵。バルセロナの市場でも見かけることはありますが、スペインでは決してポピュラーな食材とは言えません。
缶詰としては、タラをはじめ、メルルーサ、サバなどの魚卵を使ったものが、数は少ないながら流通しています。
また魚卵ではありませんが、このジャンルに入れて紹介したいのがタラ肝の缶詰。日本人にはあん肝を思わせる濃厚さがあり、好きな人にはかなりおすすめです。お酒のおつまみにも向いています。
煮物
煮込み

【煮込み / Cocido】
スペインを代表する家庭料理のひとつが、豆と肉をじっくり煮込んだコシード。ひよこ豆や白インゲン豆に、豚の三枚肉、チョリソ、モルシージャなどを加え、肉の旨味を出汁として使うのが一般的です。
特に内陸部の郷土料理として知られ、マドリード風、リオハ風、アストゥリアス風はスペインの三大煮込みとも言える存在です。
寒い季節に食べたくなる、いかにもスペインらしい素朴で力強い料理。缶詰でも売られており、温めるだけで気軽に本場の家庭の味を楽しめます。
アルボンディガス

【アルボンディガス / Albondigas】
バルの定番タパスであり、家庭料理としても親しまれているのがアルボンディガス。挽肉を丸めたミートボールを、トマトソースやシャンピニオン入りのソースなどで煮込んだ料理です。
スペインではどこのスーパーでも見かける、煮込み系缶詰の定番のひとつ。値段も比較的安く、温めるだけで食べられる手軽さが魅力です。
高級缶詰というよりは、普段使いのおかず缶。パンを添えてソースまで食べると、簡単な一品になります。
モツ煮込み

【モツ煮込み / Callos】
スペインの首都マドリードを代表する郷土料理として知られているのが、このモツ煮込み「カジョス」。牛の胃袋をはじめ、さまざまな部位のモツをチョリソやモルシージャと一緒にじっくり煮込んだ料理です。
見た目から想像するほど臭みはなく、濃厚な旨味が楽しめることから、マドリード以外でも人気のある一品。ただし脂分が多く、カロリー的にはかなりヘビーな料理と言えるでしょう。
缶詰としても定番で、蓋を開けると表面に白い脂がびっしり固まっていることがほとんど。そのため常温で食べるのではなく、しっかり温めて脂を溶かしてから食べるのが前提となります。
パンと一緒に食べれば、まさにスペインらしい力強い味わいを楽しめます。
オリーブ、野菜、その他
オリーブ

【オリーブ / Aceiteunas】
世界一の生産量を誇るスペインで、ビールのお供やおつまみの定番といえばオリーブ。バルでも家庭でも、日本の漬物のような感覚で日常的に食べられています。
大きく分けると、写真のような緑のオリーブと、完熟した黒オリーブの2種類。さらに、種付き、種なし、アンチョビ風味入りなど、種類もいろいろあります。
味はシンプルなナチュラルタイプもありますが、おすすめはアンチョビ風味のもの。塩気と旨味があり、そのままつまむだけでスペインらしいおつまみになります。
白アスパラ

【白アスパラ /Esparagos】
スペインの野菜缶詰の定番のひとつが白アスパラ。特にナバラ産のものが有名で、高級品として扱われることもあります。
シーフード缶詰と同じく、白アスパラもサイズが大きくなるほど値段が上がる傾向があります。太くて立派なものは食感も柔らかく、缶詰とは思えないほど存在感があります。
バルセロナの老舗バル「El Xampanyet」へ行くと、見たこともないような巨大な白アスパラに出会えることも。缶詰文化の奥深さを感じられる一品です。
アーティチョーク

【アーティチョーク / Alcachofa】
バルセロナ空港から市内へ向かう電車の途中に広がるアーティチョーク畑。地元カタルーニャでもよく食べられる野菜のひとつです。
スペインでは健康に良い野菜として知られ、高血圧にも良いと言われることがあります。日本人にはあまり馴染みがありませんが、味は春の山菜、フキノトウにも少し通じる独特のほろ苦さがあります。
このクセのある風味がスペインやイタリアでは好まれ、地元料理には欠かせない食材のひとつ。缶詰では下処理済みなので扱いやすく、サラダや炒め物、タパスにも使いやすい便利な一品です。
サラダ缶詰

【サラダ缶詰 / Ensaladilla】
野菜そのものではありませんが、惣菜系のサラダ缶詰も数は少ないながら存在します。
主なものは3種類で、代表的なのはバルの定番タパスとしておなじみのエンサラディージャ・ルサ、いわゆるロシアンサラダ。じゃがいもや野菜、ツナなどをマヨネーズで和えた、スペインではとても親しまれている一品です。
そのほかに、地中海風サラダの「Mediterránea」、そしてなぜか「California」という名前のサラダもあります。味は好みが分かれるところですが、量のわりに安価で、手軽な惣菜缶としては便利です。
ハムの缶詰

【ハムの缶詰 / Maguro】
スペインの食を代表するイベリコ豚の生ハムをはじめ、高品質なハムやソーセージが豊富に揃うこの国ですが、なぜか「ハムの缶詰」という商品も存在します。
見た目はコンビーフのようですが、中身は細かくほぐした肉ではなく、その名の通りハムそのもの。味も特別な個性があるわけではなく、どこか不思議な存在です。
一体誰が何のために買うのか少し謎ではありますが、数は少ないながら今でもスーパーの棚で細々と生き残っています。缶詰文化が発達したスペインならではの、ちょっとマニアックな一品と言えるかもしれません。
缶詰の注意点
ウイークポイントは蓋

以前の缶詰は缶切りで開けるものが一般的でしたが、現在の主流は「イージーオープンエンド」と呼ばれる、缶切りなしで開けられるタイプです。
とても便利な反面、このタイプは衝撃に弱いという短所があります。
缶詰は瓶のように割れないため、日本へのお土産として買って帰る時も、ついスーツケースにそのまま詰めてしまいがちです。ですが、蓋の面に荷物が強く当たると、まれに中の汁やオイルが漏れてしまうことがあります。
特にオイル漬けやソース入りの缶詰は要注意。持ち帰る時は、蓋の面に直接圧力がかからないようにし、ビニール袋などに入れてから衣類で包むと安心です。
特殊なアンチョビ缶詰

一般的に缶詰は「腐らないもの」と思われがちですが、それは加熱殺菌してから密封されているためです。
ところがアンチョビ缶は少し特殊で、加熱せずに缶に詰められるため、商品として出荷された後も缶の中で熟成が進み続けます。
そのため、店頭で冷蔵販売されているのは、熟成を進ませすぎないため。普通の缶詰のように常温保存するものではありません。
常温で置いておくと缶の中で熟成が進みすぎ、イワシの身が崩れて溶けてしまうことがあります。最悪の場合、魚醤のような状態になってしまい、食べられなくなるので注意が必要です。
日本への持ち帰り方

缶詰は「腐らない」「割れない」と思われがちですが、実は意外な落とし穴があります。
現在主流のイージーオープンエンド缶は便利な反面、蓋の部分が衝撃に弱い構造です。そのため、日本へのお土産として持ち帰る際は、スーツケースへの詰め方に少し工夫が必要になります。
缶はなるべく紐で束ねるなどして固定し、矢印がある場合は上向きに揃えて重ねるのがおすすめ。一番上の缶だけは逆に底を上にして置き、スコア(切り欠き)部分に他の荷物が直接当たらないようにすると安心です。
また、万が一の液漏れに備えて、箱ごとビニール袋やラップで包んでおくと被害を最小限に抑えられます。
特にアンチョビは要注意。購入後はホテルの冷蔵庫で保管し、帰国直前まで冷やしておくのが理想です。一般的な缶詰とは違い、常温では熟成が進み続けるため、高温環境は避けたいところです。
なお、缶詰の中にはオイルや液体が入っているため、機内持ち込み手荷物では保安検査で問題になる可能性があります。必ず預け荷物のスーツケースに入れて持ち帰るようにしてください。
冬場であれば24時間程度の移動なら大きな問題はありませんが、夏場の高温期は保冷材を用意するか、特にアンチョビについては購入を見送るのが無難でしょう。
おすすめ缶詰
これまでに約400種類の缶詰を食べ比べてきた中で、特に印象に残り、日本へのお土産にも良さそうだと思ったものを、現時点でピックアップしました。
50個、100個、そして200、300、400個と食べ進めていくうちに、自然と缶詰を見る目も変わってきます。
これからさらに食べ続けていけば、また新しいおすすめ缶詰に出会うかもしれませんが、現時点では以下のものをおすすめとして紹介します。
なお、ここで紹介するのは、スーパーやデパートなどで比較的手に入りやすい缶詰に絞っています。専門店でしか買えないようなブランドや、入手が難しい高級缶詰は、今回はあえて外しました。
【タラ肝 / Hígado de bacalao】

日本では冬の鍋料理に欠かせない魚として親しまれているタラ。その肝を缶詰にしたのが、このタラ肝の缶詰です。
味わいはまるであん肝そのもの。濃厚でクリーミーな旨味があり、日本酒はもちろん、ワインとの相性も抜群です。酒の肴としては最高レベルと言っても良いでしょう。
しかも値段は比較的リーズナブルで、高級珍味というほどではなく気軽に楽しめるのも魅力。日本ではなかなか見かけない商品だけに、お土産としても一押しの缶詰です。
バルセロナでは、日本人旅行者にも人気のカタルーニャ広場横にあるデパート、コルテ・イングレスの地下食品売り場で購入できます。写真上段の「OFFICER」ブランドのものは手に入りやすく、初めて試す方にもおすすめです。
Langostillos

日本のホッキ貝に少し似ていますが、別種の貝です。
この貝の面白さは、何といっても独特の食感。噛むと中が少しぬるっとしていて、日本ではあまり出会わないタイプの味わいです。
酒の肴としてもおすすめできる缶詰で、いくつかのブランドから販売されています。その中でも個人的におすすめなのは、写真上段のカルフールのもの。
定番のデパート、コルテ・イングレスにもオリジナルブランドの商品があります。こちらも悪くありませんが、時々砂抜きが甘いことがあるため、その点は少し注意が必要です。
また、安さで知られるメルカドーナにも売っていますが、価格が安い分、量が少なく、砂を噛むこともあります。あえて選ぶ必要はあまりないかもしれません。
マテ貝

市販されているマテ貝の缶詰は、正直なところ食べてみるとイマイチなものが多い印象です。
その中で、現時点でおすすめできるのがこの3つ。写真中段の「DARDO」ブランドのNavajas、同じく写真中段の「ESPINALER」ブランド、そして下段の「PORTOMAR」です。
一般的なマテ貝の缶詰は水煮が多いのですが、「PORTOMAR」はオイル漬けという少し珍しいタイプ。それぞれ味や食感に違いがあるので、どれが一番良いかは好みによるところです。
価格は日本円で800円ほどと缶詰としてはやや高めですが、それだけの価値はあると思います。
なお、「DARDO」以外は、カタルーニャ広場横のコルテ・イングレス地下食品売り場で購入できます。
Mejillones ムール貝

スペインの海鮮缶詰の中でも、最もポピュラーと言えるのがムール貝。ただし、どれも美味しいかと言われると少し微妙で、当たり外れがかなりはっきりしています。
その中で間違いない一押しは、写真上段の「ESCURIS 8/10」。8/10というのは貝のサイズを表しており、かなり大粒に属します。価格も5.50ユーロほどと、ムール貝缶詰としては高額ですが、その分満足度は高い一品です。
それに比べると少しレベルは落ちますが、写真中段の「FRISCOS」もおすすめ。1.99ユーロと手頃ながら、ムール貝独特の臭みが少なく、値段を考えるとかなり優秀です。
以上はいずれも、ムール貝缶詰の王道であるエスカベッシュ味。酸味のある定番タイプです。
一方で、酸っぱい味が特に好きというわけでなければ、玉ねぎの甘みが効いたガリシアソース(Salsa Gallega)もおすすめです。こちらの方が味が分かりやすく、初めての方にも食べやすいかもしれません。
写真下段の「Palacio de Oriente」もそのひとつですが、ガリシアソースに関してはブランドにそこまでこだわらなくても、どれもそれなりに美味しく仕上がっています。
コルテ・イングレスの地下食品売り場にも何種類かあるので、「Salsa Gallega」の表示を目安に選ぶと良いでしょう。
マグロのトロ Ventresca de Atun

マグロの下腹部分、いわゆるトロの部位を使ったツナ缶です。身は細長い棒状で、普通のツナ缶に比べるとコクがあり、お土産にするなら断然こちらがおすすめです。
そのまま食べても美味しいですが、より良さが分かるのはサラダにした時。市販のドレッシングやマヨネーズは使わず、ビネガー、オリーブオイル、塩だけでシンプルに味付けし、生玉ねぎのスライスやトマトを添えると、素材の味が引き立ちます。
おすすめは、バルセロナの大手スーパーCapraboのグルメ缶詰シリーズ「SELEQTIA」のVentresca。価格は5.59ユーロほどで、品質を考えるとお土産向きです。
もう少し値段を抑えたい方には、ドイツ資本の安売りスーパーLidlで売られている「NIXE」ブランドのVentrescaも選択肢になります。この手のトロ缶としては破格の1.70ユーロほどで、味はそれなりですが、価格重視なら十分おすすめできます。
アンチョビ Anchoa

瓶詰めの方が一般的ではありますが、スペインの缶詰文化を語るうえで外せない王道のひとつがアンチョビです。
カタクチイワシを塩漬けにして熟成させた、いわば発酵食品の一種。熟成の過程で独特の旨味が引き出され、他のシーフード缶詰とは一線を画す奥深い味わいがあります。
おすすめは、写真上段の「DIEZ」。4.90ユーロほどで、小骨の処理、食感、塩加減のバランスが良く、かなりおすすめできます。
次に写真中段の「CODESA」も4.95ユーロほどで、丁寧な造りが感じられる一品。上記2つに比べると少し落ちますが、写真下段の「CASA BORDAS」は2.84ユーロほどとリーズナブルで、価格を考えると悪くありません。
いずれもコルテ・イングレスの地下食品売り場で購入できます。
また、ばらまき土産として使いやすいのが、フランス資本の大手スーパー、カルフールの低価格アンチョビ。1.18ユーロほどながら、この価格帯としてはかなり優秀だと思います。
イカ、Calanares(chipirones)

スペインにはイカを使った缶詰がいろいろあります。イカ墨入り、アメリカンソース仕立てなどもありますが、個人的には、素材の味を素直に楽しめるシンプルなオイル漬けが一番おすすめです。
おすすめは、老舗ALBO社の「Calamares(Chipirones)」。価格は5.15ユーロほどで、他ブランドにはもっと安いものもありますが、この値段を出す価値は十分にあります。
イカの食感もよく、味付けも強すぎないので、そのままおつまみにしても、パンにのせても楽しめます。
コルテ・イングレスの地下食品売り場、またはスーパーCapraboで購入できます。
ウナギの稚魚 Angulas

スペインを代表する高級珍味として知られるウナギの稚魚。ただし本物は非常に高価なため、庶民が日常的に食べているのは、魚のすり身で作られたイミテーションの方です。
色々なブランドから出ていますが、その中で比較的おすすめできるのが「PAYPAY」ブランド。トーストしたニンニクと唐辛子が入ったアヒージョ風の味付けで、他のウナギ稚魚風缶詰に比べると、味のまとまりが一歩抜けている印象です。
日本ではなかなか見かけないタイプなので、珍しいお土産としても面白い一品。食べる時はそのままよりも、軽く温めるとさらに美味しくなるはずです。
こちらもコルテ・イングレスの地下食品売り場、またはスーパーCapraboで購入できます。
煮込み Cocido

煮込み系の缶詰は脂肪分が多く、かなりヘビーなものが多いです。さらに、正直あまり美味しくないものも少なくありません。
その中でおすすめできるのが、写真上段のLITORALの「Cocido Madrileño」。LITORALはもともとスペインのメーカーでしたが、現在は世界的食品メーカーのネスレ傘下にあります。買収されるだけあって、スペインの煮込み缶詰としてはベストブランドと言える存在です。
もうひとつ、日本人には好みが分かれるかもしれませんが、LOURIÑOの「Manos de Cerdo」、豚足の煮込みもおすすめです。
どちらも「ぜひお土産に」と強くすすめるタイプではありませんが、地元スペイン人が普段食べている街場の食堂の味をよく再現しています。まさに本場の普段着の味を知るには面白い缶詰です。
コルテ・イングレスの地下食品売り場で購入できますが、シーフード缶詰とは別のコーナーに置かれています。スーパーCapraboでも購入できます。
ハズレ缶詰
まとめ&アドバイス
以上が、缶詰を約500種類食べてみた現時点での感想です。
冒頭でも述べましたが、まだこれからも数百種類は食べ続けていく予定です。同じ種類の缶詰でも、ブランドによって味はかなり変わります。
全体的には値段相応という傾向がありますが、もちろん一概には言えません。老舗ブランドが一番かと思えば、スーパーの独自ブランドでも値段のわりに良いものがあったりします。
一方で、安いスーパーとして地元スペイン人に人気のメルカドーナのオリジナルブランド缶詰は、確かに価格は安いのですが、素材の質や商品の魅力という点では少し物足りず、今回はおすすめの対象から外しました。
経験上、貝類や魚介系の缶詰は、個体のサイズが大きくなるほど旨味や食べ応えが増す傾向があります。ただし、その分値段も高くなります。
とはいえ、その公式がいつも当てはまるわけではありません。高いのにそれほど美味しくないものも当然あり、そのあたりが缶詰選びの悩ましいところです。
また、日本のガイドブックなどで「おすすめのお土産缶詰」として紹介されているものの中には、本当にきちんと食べ比べたうえで選んでいるのか、少し疑問に感じるものもありました。
私自身も、これで完全に分かった、見切ったと言えるレベルにはまだまだ程遠いです。結局のところ、おすすめの精度を上げるには、これからも食べ続け、比べ続けるしかないのだと思います。
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この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。ジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。。 記事最終更新 2027.07.07 |
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