
ローマ時代にヒスパニア有数の重要都市として栄えたタラゴナを紹介します。
目次
はじめに
タラゴナは、バルセロナの南約100kmに位置する地中海沿いの町です。
古代ローマ時代には タラコ(Tarraco) と呼ばれ、ヒスパニア・キテリオル、のちのタラコネンシス属州の州都として栄えました。イベリア半島におけるローマ支配の重要拠点であり、当時のヒスパニアを代表する都市のひとつでした。
現在でも町のあちこちにローマ時代の遺跡が残っており、それらは 「タラコの考古遺跡群」 として、2000年にユネスコの世界遺産に登録されています。
中でも、地中海の青い海を背にした円形競技場は、タラゴナを代表する風景と言えるでしょう。
バルセロナからタラゴナまでは、快速電車で約1時間20分、特急なら約50分ほどでアクセスできます。
見どころ

ローマの城壁に造られた門をくぐって旧市街へ
ローマ遺跡やカテドラルなど、タラゴナの主な見どころは旧市街周辺に集まっています。そのため、1日あれば一通り歩いて見て回ることができます。
中世の面影を残す旧市街の路地を歩いていると、ふとした場所にローマ時代の遺跡が現れる。これこそが、タラゴナ散策の面白さです。
町なかも夏のビーチも、バルセロナのように観光客で溢れかえることは少なく、どこかのんびりとした空気が漂っています。ローマ遺跡の重みと、地中海沿いの穏やかさが同居しているのが、タラゴナらしい魅力です。
円形闘技場Anfiteatro Romano

タラゴナの円形競技場は、ローマ時代のタラコを代表する遺跡のひとつです。
地中海を見下ろす場所に造られており、青い海を背景に残る石造りの遺跡は、タラゴナでも特に印象的な景色のひとつです。
当時の収容人数は約1万2,000人。ここでは剣闘士の試合や猛獣狩りなど、ローマ市民のための大規模な見世物が行われていました。
現在残っているのは一部ですが、海に面した立地と観客席の跡を見ると、かつてここに多くの人々が集まり、熱狂していた様子が想像できます。
剣闘士は、単なる「殺し合い」だけではなかった
上のスペイン語の動画では、この円形競技場の収容人数や、当時ここで行われていた見世物について説明されています。
この円形競技場は、約1万2,000人を収容できたとされ、剣闘士の試合や猛獣狩りなどが行われていました。
円形競技場というと、映画の影響で「剣闘士が命をかけて殺し合う場所」というイメージを持たれがちです。もちろん、危険な見世物であったことは間違いありません。
しかし実際には、剣闘士はローマ社会におけるひとつの職業でもありました。人気のある剣闘士は収入を得て、長く活動することもあり、家族を持つ者もいました。すべての試合が死を前提にしたものだったわけではありません。
つまり、この円形競技場は単なる残酷な処刑場ではなく、当時のローマ人にとっての巨大な娯楽施設でもありました。そう考えて眺めると、目の前の遺跡が少し立体的に見えてきます。
| 住所 | Parc de l’Amfiteatre romà 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.tarragona.cat/patrimoni/museu-historia/monuments/lamfiteatre |
| 開館時間 | 火~土9:00 – 19:00 日祝9:00 – 15:00 (月休) 無料開館日: タラコ・ビバ開催中、国際ミュージアムの日、ミュージアム・ナイト、9/21、9/22 |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 所要時間 | 1時間 |
プレトリとシルク・ローマ Pretori i Circ Romans

ここでは、ローマ時代の建物「プレトリ」と、戦車競走場だった「シルク・ローマ」の遺構をあわせて見学できます。
プレトリ(写真左)は、もともとローマ時代の行政・軍事施設に関わる建物でした。その後、中世には王の居城や塔としても使われ、時代ごとに改築が重ねられてきました。そのため内部は、ローマ時代の遺構だけがそのまま残っているというより、複数の時代の要素が混ざり合った空間になっています。
現在、プレトリの内部は展示スペースとして整備されており、タラゴナのローマ遺跡に関する資料や発掘品などを見ることができます。
一方のシルク・ローマは、馬に引かれた戦車が速さを競った競技場です。ここでいう「シルク」は、現代のサーカスではなく、ローマ時代の戦車競走場を意味します。
現在見学できる長い地下通路は、かつて観客席の下にあたる部分です。約2000年前、この通路を競技の準備をする人々や関係者が行き交っていたことを想像すると、ただの石造りの通路も違って見えてきます。
ローマ時代のレースの様子
上のCG動画は、ローマ時代の戦車競走の様子を再現したものです。
ローマ時代のシルクでは、馬に引かれた戦車が競技場の中を何周も走り、速さを競いました。戦車は二頭立てや四頭立てがあり、御者は手綱を操りながら、相手をかわし、転倒の危険と隣り合わせで走っていました。
特に危険だったのが、競技場の両端にある折り返し地点です。ここでは戦車同士が接近し、接触や転倒が起きやすく、観客にとっても最も盛り上がる場面でした。
現在残っている遺構だけを見ると、当時の熱気はなかなか想像しにくいかもしれません。しかし、かつてここには大勢の観客が集まり、馬の走る音、車輪の響き、歓声が競技場全体に広がっていたはずです。
この地下通路や石造りの遺構を歩きながら、約2000年前に行われていたローマ人たちの大衆娯楽を想像してみると、シルク・ローマの見え方も少し変わってきます。
| 住所 | Parc de l’Amfiteatre romà 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.tarragona.cat/patrimoni/museu-historia/monuments/el-circ-roma |
| 開館時間 | 火~土9:00 – 19:00 日祝9:00 – 15:00 (月休) 無料開館日: タラコ・ビバ開催中、国際ミュージアムの日、ミュージアム・ナイト、9/21、9/22 |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 所要時間 | 1時間 |
カテドラル Catedral

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タラゴナはローマ遺跡の町として知られていますが、旧市街の中心に建つカテドラルも見どころのひとつです。
聖マリアに捧げられたこのカテドラルは、ローマ時代のジュピター神殿跡に建てられました。古代ローマの聖域の上に、中世キリスト教の大聖堂が重なっているという点に、タラゴナらしい歴史の面白さがあります。
建設は12世紀に始まり、その後200年以上をかけて完成しました。ファサードや回廊の柱頭には、人物や動物をかたどったロマネスク彫刻も残されています。
ただし、タラゴナ観光で必ず内部まで見学すべきかというと、そこは好みが分かれるところです。すでにバルセロナのカテドラルなどを見ている方にとっては、強い感動があるとは限りません。また、内部と回廊を見学するとそれなりに時間もかかります。
ローマ遺跡を中心に見たい場合は、外観を見て、ローマ神殿跡に建つ中世の大聖堂という位置づけを理解するだけでも十分だと思います。時間に余裕がある方、教会建築やロマネスク彫刻に関心のある方は、内部見学を加えるとよいでしょう。
| 住所 | Pla de la Seu 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.catedraldetarragona.com/?page_id=175&lang=en |
| 開館時間 | 11/2~3/17 月~金10:00-17:00、土10:00-19:00、日休 3/18~6/9 月~土10:00-19:00、日休 6/10~9/10 月~土10:00 – 20:00、日15:00-20:00 9/11~11/2 月~土10:00 – 19:00、日休 11/3~3/15 月~金10:00 -17:00、土10:00 – 19:00、日休み 詳しいカレンダーはこちら |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 所要時間 | 1時間 |
考古学の道 Paseo Arqueológico

「考古学の道」は、紀元前3世紀頃に築かれた城壁に沿って歩く遊歩道です。
名前だけ聞くと、いかにもローマ遺跡らしい雰囲気を期待してしまいますが、実際に歩いてみると、遺跡そのものの迫力を強く感じる場所というより、城壁沿いを静かに散策する場所という印象です。
タラゴナ観光に丸一日使えるなら、旧市街歩きの一部として立ち寄ってもよいでしょう。ただし、半日程度でローマ遺跡を中心に見る場合は、無理に時間を割かなくてもよいと思います。
古代の城壁に沿って歩きながら、少し落ち着いて町の外側を眺めたい方には向いている場所です。
| 住所 | 考古学の道 Paseo Arqueológico 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.tarragona.cat/patrimoni/museu-historia/monuments/copy_of_les-muralles |
| 開館時間 | 火~土9:00 – 19:00 日9:00 – 15:00 (月休) 無料開館日: タラコ・ビバ開催中、国際ミュージアムの日、ミュージアム・ナイト、9/21、9/22 |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 所要時間 | 1時間 |
考古学博物館 Museu Arqueologic

タラゴナには、ローマ時代の出土品などを展示する考古学博物館もあります。
ただし、限られた時間でタラゴナを観光する場合、必ずしも優先度が高い場所ではありません。考古学やローマ時代の資料に強い関心がある方には意味のある施設ですが、一般的な観光であれば、博物館内の展示に時間を使うより、実際に街の中に残る遺跡を歩いて見る方が、タラゴナらしさを感じやすいと思います。
また、タラゴナには市街地から少し離れた場所に、ローマ時代の水道橋も残っています。こちらはアクセスがあまり良くないため、自力で行く場合は往復と見学を含めて3時間ほど見ておいた方がよい場所です。
そのため、時間に限りがある場合は、考古学博物館に時間を割くよりも、円形競技場やシルク・ローマなど市内の遺跡をしっかり見るか、余裕があれば水道橋まで足を延ばす方が、タラゴナのローマ遺跡をより実感しやすいでしょう。
| 住所 | Plaça del Rei, 5 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.mnat.cat/?page=arqueologic-info-practica |
| 開館時間 | 冬季(10月~5月) 火~土9:30 – 18:00 日祝10:00 – 14:00 (月休) 夏季(6月~9月) 火~土9:30 – 20:30 日祝10:00 – 14:00 (月休) 休館日:1/1、5/1、12/25、12/26 無料開館日: 10~6月の最終火曜日 |
| 料金 | 公式サイトにてご確認ください。 |
| 所要時間 | 1~2時間 |
旧市街の散策
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タラゴナの旧市街は、ローマ時代、中世、そして現在の生活が入り混じる場所です。
石造りの壁や細い路地を歩いていると、ローマ時代の遺構がふと現れ、そのすぐそばに中世の建物があり、さらにその中で今も人々の暮らしが続いています。遺跡が町から切り離されているのではなく、現在の生活の中にそのまま残っているところが、タラゴナらしい魅力です。
旧市街では、何かひとつの名所を急いで見に行くというより、歩きながら町の重なりを感じるのがよいと思います。地元の人たちの暮らし、観光客の姿、カフェのテラス、石畳の路地。そうしたものを眺めながら、自分なりに「ローマ遺跡の町タラゴナに来た」という感覚を味わう時間です。
すべてを説明で理解しようとしなくても、ふとした壁の石、路地の曲がり方、広場の空気から、この町が長い時間をかけて積み重なってきたことが伝わってきます。
ラス・ファレラス水道橋

タラゴナ市内から少し離れた山の中に、ラス・ファレラス水道橋があります。別名「悪魔の橋 Pont del Diable」とも呼ばれる、タラゴナ周辺でぜひ見ておきたいローマ遺跡のひとつです。
この水道橋は1世紀頃に築かれたとされ、現在残っている部分は長さ約217メートル、高さ約27メートル。上下2段のアーチ構造になっており、上段に25、下段に11のアーチが並んでいます。
約2000年前に造られた石造りの水道橋が、今も山の中に堂々と残っている姿を見ると、ローマ人の建築技術の高さに驚かされます。セメントに頼らず、石を組み上げてこれだけの構造物を造り、長い年月を越えて残っているというだけでも見ごたえがあります。
市内の遺跡は、現在の町や中世の建物と重なり合って残っていますが、この水道橋は周囲が自然に囲まれているため、より「ローマ時代の巨大建築を見ている」という実感があります。
また、現在は水道橋の上部を歩くこともできます。かつて水が通っていた場所に立つと、単に下から眺めるだけでは分からない高さとスケールを感じられます。
ただし、市内中心部からのアクセスはあまり良くありません。路線バスかタクシーで行くことになりますが、自力で訪れる場合は往復と見学を含めて、ある程度まとまった時間を見ておいた方がよいでしょう。
半日観光では少し組み込みにくい場所ですが、タラゴナでローマ建築の迫力を感じたいなら、考古学博物館などに時間を使うより、こちらの水道橋まで足を延ばす方が印象に残ると思います。
まとめ
タラゴナのローマ遺跡は、ローマやポンペイのように、当時の姿がそのまま残っている遺跡ではありません。保存状態だけを見れば、正直なところ、かなり失われている部分も多くあります。
たとえばシルク・ローマも、かつての巨大な戦車競走場の全体像がはっきり残っているわけではありません。現在見学できるのは、その一部にすぎません。
ただし、ローマ時代の戦車競走場は、ヨーロッパ各地にあったにもかかわらず、現在まで形を残しているものは非常に限られています。その意味では、タラゴナに残るシルク・ローマの遺構は、断片的であっても貴重な存在です。
そして、この街のローマ遺跡を楽しむうえで一番大切なのは、「完全な遺跡を見る」というより、ローマ時代の上に中世が重なり、その上に現在の街の生活が続いている様子を見ることだと思います。
石の壁、地下通路、塔、広場、現在の住宅や商店。時代の違うものがきれいに分けられているのではなく、まるで歴史の地層のように重なり合っています。そこにタラゴナの面白さがあります。
今でこそヨーロッパでは文化財を守ることが当然のように考えられていますが、そうした意識が一般的になったのは、実はそれほど昔のことではありません。それ以前の時代には、古代の建物は壊され、石材は別の建物に再利用され、街の発展や生活のために使われてきました。
つまり、人間は過去を大切に保存してきただけではなく、過去を壊し、使い直しながら、新しい文明や文化、町や生活を作ってきたとも言えます。
タラゴナの遺跡は、その現実をよく見せてくれます。きれいに整った博物館の中の遺跡ではなく、古代・中世・現代が混ざり合った、生きた街の中の遺跡です。
なお、夏に訪れる場合は注意が必要です。タラゴナ観光は屋外を歩く時間が長く、日差しもかなり強くなります。遺跡をすべて詰め込んで回ろうとすると、思った以上に体力を使います。
特に夏場は、無理に予定を詰め込みすぎず、日陰で休みながら、余裕を持って歩くことをおすすめします。タラゴナは、急いで消化するよりも、街の中に残る歴史の層を感じながら歩く方が楽しめる町です。
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お勧め度:17点/20点 |
| 住所 | タラゴナ県、ジローナタラゴナ市 【地図はこちら】 |
| URL | http://www.tarragonaturisme.cat/en (市役所観光局のHP) |
| 最寄駅 | バルセロナからは、サンツ駅よりRenfeに乗って Girona (ジローナ)駅下車、所要時間 電車1時間半程 時刻表はRenfeのHPでお調べ下さい。 |
| 所要時間 | 半日~1日 |
記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますので、サイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。
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この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。 記事最終更新 2026.06.21 |
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