
スペインと言えばワインのイメージが強いかもしれませんが、実際にはビールも非常によく飲まれています。特に暑い季節が長いスペインでは、バルやレストランでビールを片手に食事を楽しむ光景を至る所で見ることができます。
ここでは、バルセロナでよく飲まれている代表的なビール22本を実際に購入し飲み比べてみました。検証にあたっては、生粋の吞兵衛である秋元さんにも参加してもらい、それぞれのビールを評価しています。
味の好みは人それぞれですが、これからスペインでビールを飲んでみたい方、お土産として購入を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
標準スペインビール

スペインで飲まれているビールの多くは、日本でもお馴染みの淡色ビールです。これらはチェコ発祥の「ピルスナー」と呼ばれるタイプで、黄金色の見た目とホップの苦味が特徴となっています。
ただし、ドイツやベルギーなど北ヨーロッパのビールと比べると、スペインのビールは全体的に軽く、すっきりとした飲み口のものが主流です。
暑い日が多いスペインでは、料理と一緒に気軽に飲める爽快なビールが好まれる傾向があります。そのため、日本の一般的なビールに慣れている方であれば、スペインのビールも比較的飲みやすく感じるでしょう。
スペインビールの起源

ドイツ風の木組みの家が残るアルザス地方
スペインで本格的なビール造りが始まったのは1856年。
その中心人物が、バルセロナでMoritz(モリッツ)を創業したアルザス出身のルイス・モリッツ・トラウトマンです。
実は当時スペイン各地で誕生した主要なビールメーカーの多くも、同じくアルザス出身者によって創業されており、現在のスペインビール文化の礎を築いたと言われています。
そのため、スペインビールの歴史を辿ると、意外にもアルザス地方との深い関わりを見ることができます。
サッカーと地元ビール

スペイン国内の州別の勢力図。
日本では東京と大阪でビールの好みに大きな違いはありませんが、スペインでは地域ごとの特色が強く、地元のビールを好む傾向があります。
例えばバルセロナで何も言わずにビールを注文すると、多くの場合は地元ブランドの「Estrella Damm」が出てきます。一方、マドリードやセビージャ、ガリシアなど他の地域へ行くと、それぞれの土地を代表するビールが飲まれています。
スペイン人にとってビールは単なる飲み物ではなく、その土地の文化やアイデンティティの一部とも言える存在です。近年は大手メーカーの統合や買収が進み、全国規模で販売されるブランドも増えていますが、それでも地元ビールへの愛着は依然として強く残っています。
セルベッサとカーニャ
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スペインのバルでビールを注文する場合、大きく分けて2種類あります。
一つは瓶ビールの「セルベッサ(Cerveza)」。もう一つはカウンターのサーバーから注がれる「カーニャ(Caña)」です。
日本のガイドブックなどではカーニャを「生ビール」と説明していることがありますが、日本ほど瓶ビールと生ビールの味の違いはありません。
実際には、瓶で提供されるかグラスで提供されるかの違い程度に考えておけば良いでしょう。また、「セルベッサ」は本来ビール全般を意味する言葉でもあります。
そのため、単に「セルベッサ」と注文しても、お店によってはグラスに入ったカーニャが出てくることがあります。特に観光客の多いレストランやバルでは、その区別はかなり曖昧です。
なお、スペインのスーパーには缶ビールと瓶ビールの両方が並んでいますが、バルやレストランで提供されるのはほとんどが瓶ビールです。
スペイン人の中には缶ビール特有の風味を好まない人も多く、外で飲むビールは瓶が当たり前という感覚があります。
第一回、飲み比べ
バルセロナでよく飲まれているのはこの6種を飲み比べてみました。

雲ひとつない夏のバルセロナ。「暑いほどビールは美味しい」を実証すべく、気温30度を超える炎天下のバルセロネータ海岸で、地元でよく飲まれているビール6種類を飲み比べてみました。
ところで、あまり知られていませんが、夏のバルセロナでは日本と同じように冷えたグラスに水滴が付きます。一方、夏には40度を超えることも珍しくないマドリードでは、気温が高くてもグラスにほとんど水滴が付きません。
これは気温ではなく湿度の違いによるもので、同じスペインでも地中海沿岸のバルセロナと内陸部のマドリードでは気候が大きく異なります。そんな真夏のバルセロナで、実際にどのビールが美味しかったのか試してみました。
Esrella Damm

バルセロナを代表するビールブランドが、このEstrella Dammです。
1876年、アルザス出身のアウグスト・クエンツマン・ダムによって創業され、現在ではカタルーニャを代表する企業の一つとなっています。
味はすっきりと軽く、苦味も控えめ。非常に飲みやすく、スペインビールらしい爽快さを感じます。現在もバルやレストランで最もよく見かけるビールの一つであり、バルセロナを訪れたら一度は飲んでおきたい定番ブランドです。
【一言メモ】
バルセロナ市民にとっての「ビールの標準」がこのEstrella Damm。何も考えずにビールを注文すると、まずこれが出てくると言っても過言ではありません。
MORITZ

バルセロナ最古のビールメーカーとして知られるのが、このMORITZです。
創業は1856年。Estrella Dammよりも古く、スペインのビール史を語る上で欠かせない存在です。
1970年代の経営危機により長期間生産を停止していましたが、2004年に復活。現在では再びバルセロナを代表するビールブランドの一つとなっています。
味はEstrella Dammよりも個性があり、苦味や香りもやや強め。そのため好みは分かれますが、熱心なファンも少なくありません。
【一言メモ】
2004年の復活にあわせて本社兼フラッグシップ店舗を整備し、バルセロナを代表するビールブランドとして再出発しました。現在でもサン・アントニ地区にある「Fàbrica Moritz Barcelona」は、ビール好きに人気のスポットとなっています。
San Miguel

1890年、スペイン統治時代のフィリピン・マニラで誕生したのがSan Miguelです。
その後、ヨーロッパでのブランド使用権を取得したスペイン企業によって発展し、現在ではスペインを代表するビールブランドの一つとなっています。
味はクセが少なく、すっきりとした飲み口。非常に飲みやすい反面、個性という点ではやや控えめで、万人向けのビールと言えるでしょう。
現在はMahouグループの中核ブランドとして、スペイン全国で広く飲まれています。
【一言メモ】
カタルーニャのEstrella Damm、マドリードのMahouと並び、スペイン人なら誰でも知っている定番ブランド。どこへ行っても見かけるため、旅行中に最も遭遇するビールの一つです。
Mahou

1890年にマドリッドで創業したビールメーカー。
創業当時から飲食店向けに氷の販売を行っていたこともあり、その販路を活かしてビール事業を拡大しました。
現在はSan MiguelやAlhambraなどのブランドを擁するスペイン最大級のビールグループの中核を担っています。味はスペインビールらしく軽快で飲みやすく、苦味も比較的控えめ。
飲み慣れた日本のビールに近い印象があり、日本人にも受け入れられやすい味だと思います。
【一言メモ】
レアル・マドリードのオフィシャルビールとしても知られる、マドリードを代表するブランド。スペイン国内では非常に知名度が高く、Estrella Dammと並ぶ全国区のビールと言えるでしょう。定番の赤ラベル以外にも、「Mahou Clásica」や「Mahou Cinco Estrellas」など様々なシリーズが販売されています。
Estrella Galicia

スペイン北西部、ガリシア地方のコルーニャで1906年に創業したビールメーカー。
創業者はメキシコから帰国した移民のホセ・リベラ・コラルで、現在も創業家による経営が続いています。
雨の多いガリシア地方らしく、醸造には軟水が使用されているのが特徴です。味はすっきりとしていて飲みやすく、苦味も比較的穏やか。
軟水仕込みと言われればそんな気もしますが、正直なところ飲み比べただけでその違いを見分けるのは難しいかもしれません。
【一言メモ】
以前はバルセロナで見かける機会はほとんどありませんでしたが、現在ではスーパーやバルでも目にするようになりました。
派手な個性こそありませんが、バランスの良い飲みやすさが魅力のビールです。
Cruzcampo

1904年にスペイン南部アンダルシア地方で創業したビールメーカー。現在でもセビージャを代表するビールとして知られています。
会社は1991年にギネス社に買収され、その後2000年にはハイネケングループの傘下となりました。現在ではアンダルシアだけでなく、スペイン全国で販売されています。
味は軽く飲みやすく、良くも悪くも癖のないビールです。ただ、今回飲み比べた中では特別な個性は感じられず、在住日本人の間で今ひとつ人気が伸びない理由も何となく分かる気がします。
【一言メモ】
現在は世界的なハイネケングループの一員となっていますが、地元セビージャでは今でも根強い人気があります。一方で、ビール好きの立場からすると、どこか優等生すぎると言うか、無難にまとまり過ぎている印象もあります。決して不味くはありませんが、わざわざこれを選ぶ理由があるかと言われると少し悩む。そんなビールです。
飲み比べ結果&まとめ

今回試したのは、スペインのスーパーで普通に購入できる定番ビールばかりです。
日本で言えば、かつてのキリンラガーのような「その土地の標準的なビール」にあたる存在で、どれも大衆向けに作られているため、極端な個性はありません。
そんな中で明らかに他と違う特徴を感じたのが、ここバルセロナの「MORITZ」です。メーカーによると使用するホップに特徴があるとのことですが、実際に飲み比べてみても他社との違いは比較的分かりやすく、良い意味で個性を感じました。
一方、スタッフを交えて行った飲み比べでは、「Mahou」が最も好評。逆に最も評価が低かったのが「Cruzcampo」でした。
この2銘柄については評価がはっきり分かれ、比較的明確な結論が出ています。ただし、それ以外の「San Miguel」「Estrella Damm」「Estrella Galicia」については、どれも完成度が高く大きな欠点もありません。
実際に飲み比べてみても差は意外と小さく、好みの問題と言ってしまえばそれまででしょう。
結局のところ、スペインの大手ビールメーカーは長年の競争の中で似たような方向に進化しており、一般的なピルスナータイプのビールとしてはどれも一定以上のレベルに達していると言えそうです。
バルセロナで試すのはこの3本!

【Estrella Damm】
バルセロナ市民にとっての標準的なビール。
味そのものに強い個性はありませんが、バルセロナを代表するビールだけに、せっかく訪れたなら一度は飲んでおきたい一本です。
【MORITZ】
今回飲み比べた中では、他の大手ビールとは明らかに違う個性を感じたビール。
近年バルセロナで存在感を高めているブランドでもあり、ビール好きなら試してみる価値は十分あります。
【Mahou】
今回の飲み比べで最も日本人受けが良かったビール。
クセが少なく飲みやすいため、日本のラガービールが好きな方には特にお勧めです。
定番の赤ラベル以外にも「Mahou Clásica」がありますので、見かけたら飲み比べてみるのも面白いでしょう。
第2回 飲み比べ

前回は、スペイン各地で最もよく飲まれている定番ビールを飲み比べてみました。今回はその続編として、各ビールメーカーが販売している上位グレードや限定シリーズを中心に検証してみます。
これらのビールは、前回紹介した定番ビールに比べるとアルコール度数が高めで、味も濃厚。ホップや麦芽の個性をより強く感じられるものが多くなっています。そのため、「とりあえず喉を潤すビール」ではなく、味そのものを楽しみたい方にはこちらの方が面白いかもしれません。
今回の検証では、スペインの主要新聞3紙がそれぞれ発表したビールランキングに選ばれた銘柄を中心に選定。さらにスーパーで見つけた気になるビールも加え、合計15種類を実際に飲み比べてみました。

*最下段の3本はハイネケンが持つフランス、ベルギーのビールブランドをスペインで現地生産しているものです。
検証動画
今回の飲み比べは合計5回に分けて行いました。そのため動画も約25分と少々長めになっています。
「結局どれがお勧めなの?」という方は、動画の15分頃から始まる最終選考の部分をご覧ください。逆に、各ビールの特徴や飲み比べの過程も楽しみたい方は、最初から見ていただくと評価の理由がより分かりやすいと思います。
呑み比べ&まとめ
前回紹介したピルスナータイプ、いわゆる日本でも一般的なビールが、ここスペインでも現在の主流となっています。その理由は単純で、ヨーロッパの中でも温暖な気候のスペインでは、軽く飲みやすいビールが好まれるからです。
ただ近年は、北ヨーロッパで人気の濃いダークビールや個性的なクラフト系ビールも徐々に増えてきました。また各メーカーも新たな需要の開拓を目指し、従来の定番ビールとは違った高付加価値の商品に力を入れています。
今回はそうした個性的なビール15種類を飲み比べ、その中から特に印象に残った4本を選びました。ただし、濃いビールは好みが大きく分かれます。
普段からビールをよく飲む方でも苦手と感じる場合がありますので、その点はご自身の好みで判断してください。本来であれば順位を付けたいところですが、今回はどれも方向性が異なり単純な優劣を付けるのが難しいため、4本ともお勧めとしました。
幸いスペインのスーパーでは比較的安価に購入できますので、興味のある方は実際に飲み比べてみるのが一番でしょう。ただし、前回紹介した一般的なビールよりアルコール度数は高めです。
飲みやすい割によく酔いますので、その点だけはご注意ください。なお、スーパーによっては今回紹介した銘柄が揃わないこともあります。
そんな時はカタルーニャ広場のエル・コルテ・イングレス地下食品売り場を覗いてみてください。比較的品揃えが豊富です。ところで近年のスペインビール業界では、大手国際企業の影響力が年々強くなっています。
一方で、それが刺激となり地元メーカーもこれまでになかったタイプのビールを次々と投入するようになりました。その結果、消費者の立場からすると選択肢が大きく広がり、スペインのビール売り場は以前よりずっと面白くなっています。
最近のお勧めビール

2021年頃からスーパーで見かけるようになった「El Águila」ですが、最近評価が高く、私たちもよく飲んでいるお勧めのビールです。
特徴は、製造工程の最後に濾過を行わないこと。そのため瓶や缶の底には酵母などの沈殿物が残っています。
飲む前に瓶や缶を2〜3回ゆっくり回して沈殿物を全体に混ぜると、本来の味を楽しむことができます。味は一般的なスペインビールよりもコクがありながら重すぎず、非常にバランスの良い仕上がりです。
スーパーでも普通に購入でき、缶と瓶の両方が販売されています。
【一言メモ】
今回飲み比べた中でも評価の高かった一本。
定番ビールに少し飽きた方には、まず試していただきたいビールです。
| 記事は取材時点のものです。現在とは記事の内容が異なる場合もありますのでご了承ください。間違った情報、また有用新情報、分かり難い点や質問等ございましたら情報共有いたしますのでサイト内の「バルセロナ観光情報掲示板」に書き込んでください。 |
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@ | この記事を書いた人:カミムラ:生まれ京都府。1989年日本を離れバックパックをかついで海外へ。アジア、アフリカ、中南米、ヨーロッパを旅し1997年よりバルセロナに在住。記事最終更新 2026.06.09 |
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