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領事館からの防犯メール。バルセロナ在住約30年の私が考えたこと

2026年10月29日、在バルセロナ日本国総領事館から、防犯に関するメールが届きました。

11月に開催されるスマートシティーの展示会に合わせた注意喚起ですが、内容の大部分は、通常の観光で訪れる方にも関係するものです。

読んでみると、役立つ注意点がいくつもあります。一方で、これから初めてバルセロナに来る人には、どのように伝わるのだろう、と少し気になりました。

私はこの街に住んで、来年で30年になります。仕事では旅行者をご案内しています。その立場から、今回このメールを少し違う角度で読んでみたいと思います。

 

初めて来る人には、街全体が危険に見えないか

メールには、次のように書かれています。

主に、空港、電車内、観光場所周辺の路上、ホテル、レストラン等において、スリ・置き引き、高級腕時計の強奪被害が相次いで発生しています。

いずれも、確かに防犯に注意する必要がある場所です。

ただ、これを初めて来る人が読むとどうでしょう。空港に着いて、電車に乗り、ホテルに入り、食事をして観光する。その行き先が、ほぼ全部並んでいます。「では、どこなら安心できるの?」そう感じる人がいても、不思議ではありません。

 

具体的な手口を知ることは役に立つ

メールには、服に付いた汚れを拭こうとして鞄を置き、その隙に盗まれた事例が紹介されています。また、電車のホーム側から声を掛けられ、そちらに気を取られている間に、車内に置いた鞄を盗まれた事例もあります。

確かにこうした説明には意味があり、手口を知らなければ、汚れを教えてくれた親切な人だと思うでしょう。突然話し掛けられれば、何を言っているのか聞こうとする。それは普通の反応です。

だからこそ、「人の注意をそらして盗む方法がある」と事前に知っておくことは、被害を防ぐ助けになります。私も、突然何かが起きたときには、まず自分の荷物に注意を戻してほしいと思います。ただし…

 

注意する合図と相手を疑うこと

一方で、次の部分は、受け取り方に注意が必要だと感じました。見知らぬ人が突然「声を掛けてきた時」や「ぶつかってきた時」は、「犯罪発生の予兆」と考える方がいいので、できるだけ反応しないことが一番です。

声を掛けられたり、身体がぶつかったりしたときに、荷物を意識する。これは実際の対策として理解できます。

ただ、それは「声を掛けてきた人が犯罪者である」という意味ではありません。道を聞く人もいれば、本当に何かを教えてくれる人もいます。混雑した場所では、意図せず身体がぶつかることもあります。

もちろん、このメールも「全員が犯罪者だ」と書いているわけではありません。しかし、「犯罪発生の予兆」「反応しないことが一番」と続くと、読み手によっては「知らない人には関わらない方がよい」と、広く受け取るかもしれません。

私なら、こう説明したいところです。

不意に声を掛けられたら、まず荷物を確保する。そのうえで、相手の用件を聞くかどうかを判断する。警戒する動作と、相手がどんな人かという判断は、分けておいてよいと思います。

 

被害があることと、危険の大きさは別の話

メールには、「被害が後を絶ちません」「相次いで発生しています」という表現があります。

また、窃盗犯について、多くの場合、2~3名のグループで行動しておりとも書かれています。

注意を促したいことは分かります。ただ、「多くの場合」とは、どの範囲の事件を、何件調べた結果なのでしょうか?。紹介された事例は、いつ起きたのでしょうか?。

少なくともメール本文からは、そこまでは分かりません。

被害事例は、手口を知るためには役立ちます。しかし、それだけで旅行者全体の被害の割合や、最近の治安の変化を判断することはできません。

「被害が続いている」ことと「被害が増えている」ことも、同じではありません。このメールは増加していると明記していませんが、読んだ人が、そういう印象を持つ可能性はあります。

本文には詳しい安全情報へのリンクもあります。ただ、多くの人が最初に読むメールだけでは、被害の規模や傾向まではつかみにくい。注意を求める言葉に、期間や件数、比較対象が少し添えられていれば、受け取り方も変わるのではないでしょうか?。

 

注意喚起を、旅行に役立つ形で受け取る

領事館としては、被害を一件でも防ぎたいのでしょう。旅券を盗まれれば、再発給などの手続きが必要になり、短い旅行の予定が大きく崩れることもあります。その点を知らせることにも、十分な意味があります。

ただ、注意を促す情報が並ぶことで、旅行者が街全体を怖がったり、普通の人とのやり取りまで避けたりするなら、それも考えてよい問題です。

親や友人からの「知らない人には気を付けてね」なら、心配する気持ちを含めて受け取れます。一方、公的機関からの文章は、現地の実情を調べたうえでの判断として読まれます。それだけに、表現の重みも違います。

私は、このメールを無視してよいと言いたいのではありません。

荷物を放置しない。不意の出来事があったら、まず荷物に注意を戻す。高価なものを身に着ける必要があるか、出発前に考える。そうした対策は、具体的に取り入れればよいと思います。

そのうえで、紹介された被害事例だけを、バルセロナの全体像にしなくてもよいのではないでしょうか。

私が日々暮らしているのは、そうした事件が起きる街であると同時に、人が働き、買い物をし、カフェで話し、公園では子供元気に遊んで、ベンチでお年寄りが普通に休んでいる街でもあります。

 

最後に、
これから旅行する人がこれを読んで、楽しみだなと思えるだろうか?
私には、街中どこでも気を抜くなと少し脅されているようにも読めたのですが如何でしょうか(笑

 

尚、これから訪れる方には、荷物はしっかり管理しながら、その普段の姿にも触れてもらえればと思います。

参考記事:バルセロナ旅行でスリに遭わない方法|在住29年ガイドの本気対策|バルセロナウォーカー

 


※2026年10月29日配信の在バルセロナ日本国総領事館の注意喚起メールを引用し、在住者・観光ガイドとしての私見を記しました。引用中の太字等による強調は行っていません。

関連資料:領事館メールPNG画像